映画「エグザイル/絆」のDVDを、十月上旬に見ました。
2006年の作品で、監督はジョニー・トー。脚本はセット・カムイェン、イップ・ティンシンです。
●ハード・ボイルド+青春
この映画は、たぶんジャンル的には「ハード・ボイルドな闇社会物」になると思います。
でも、その随所に「青春」を感じさせる青臭さが覗いています。
その「青春」は、以前見た「柔道龍虎房」(2004)と共通するものでした。
たぶん、この「青春」は、この監督の持ち味なのだと思います。その青臭さが、味わい深い映画になっていました。
でも、この「ハード・ボイルド+青春」のバランスは、けっこう難しいよなと思いました。ギャグすれすれなので。
でも、いい笑顔で微笑む登場人物たちを見ると、こういった映画もありだなと思いました。
●血煙舞う銃撃戦
「ハード・ボイルドな闇社会物」なので、銃撃戦も当然あります。その銃撃戦が、かなり特異でした。
何が特異だったかと言うと、「血煙」です。本当に「血の煙」でした。
どういうことかと言うと、人が撃たれると、血のりが飛ぶのではなく、赤い霧が周囲に舞います。血の飛沫とかではなく、本当の「霧」が。
かなり違和感があったのですが、スローモーションの演出で血煙を撒き散らす映像を何度も見ているうちに、「まあ、これもありかな」と思うようになりました。
●コミカルな演出
真面目な映画なのですが、随所にコミカルな演出が入ります。たぶん、香港映画のノリなのだと思います。
ちょっとコミカルな演出を、シリアスなシーンに入れるような演出が多かったです(缶を蹴ってパスしたり)。
これ以上過剰だと、雰囲気を壊しかねないと思う部分もありましたが、まあこういうのもありなのではないかと思いました。
かなり、ぎりぎりだと思いましたが。
●友情と成り行きのバランス
映画は、「男の友情物」なのですが、かなり「成り行き任せ」の部分が多いです。
でも実は、この「成り行き任せ」が、この映画を成立させています。
映画の物語は、一人の男と、その友人たちで進んでいきます。その友人たちは、二つの組織にそれぞれ属しているのですが、一人の男のために金を稼ぐことになります。組織の片方が、男を殺すことになったので、彼の妻子のために金を作る必要が生じたからです。
そういった状況なので「友情だ!」という感じで最初からやる気満々なわけではないです。
男を殺すことになった組織の側の友人二人は、面倒なことになったと思っているし、もう一つの組織の側の友人二人は、なんとか男を助けたいと思っています。
友情はあるけど、目的は合致していない。その友人四人が、一つの方向に向くには、予期せぬ「縛り」が発生しなければなりません。
予期せぬことが起こった結果、抜き差しならぬ状態になり、協力して一つの方向に向かざるを得なくなる。
それが「成り行き任せ」な部分になります。
このバランスが、この映画を成立させています。頑丈な骨格という感じではなく、危ういバランスの上で、成立しているといった感じです。
ちょっと間違うと破綻しそうな映画だよなと思いました。コインを投げて、行き先を決めたりもしていますし。
●女優
ジョシー・ホーという女優さんだそうですが、素顔美人という感じでよかったです。
塗りたくった感じの人よりは、こういった人の方がよいですので。
●男優
アンソニー・ウォンは、ブルドッグみたいな感じで、面白い顔だなと思いました。
この人は、個性的な俳優さんだなと思いました。Wikipediaを見ると、本人も、かなり変わった人みたいですが。
□Wikipedia - アンソニー・ウォン (香港俳優)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82...
●粗筋
以下、粗筋です(中盤の初めぐらいまで書いています。ネタバレがあまりない方がよさそうな映画なので、中盤以降は割愛します)。
一人の男が、殺しのターゲットとされた。その男は、逃亡していたが、妻子の許に戻ってくる。そしてその男の許に、四人の男がやってきた。
四人は、幼い頃からの男の友人だった。四人のうち二人は、男を殺す命令を出した組織に属している。残り二人は、違う組織に属していて、男の命を救いたいと思っている。
妻子の前で銃撃戦をしたあと、彼らは食事を食べ始める。それが終わったあと、男を殺す命を受けてきた友人は、「いつまで待てばよいか」と尋ねる。男たちは話し合いの結果、妻子に十分な金を残したあと、男の命を絶つということで合意する。
彼らは、高額の仕事を得るために、裏の斡旋屋を訪ねる。そこで得た暗殺の仕事に行ったところで、男を殺せと命じたボスと鉢合わせる。そして、銃撃戦の末、全員が逃亡しなければならなくなる。
だが、逃亡は容易ではなかった。命を狙われていた男は、殺しに来た男を助けるために、傷を負っていた。彼らは、逃亡の前に、闇医のところに行く。だが、そこでボスと鉢合わせになり、決死の銃撃戦を余儀なくされる……。
●総評
で、映画はよかったか悪かったかと言うと、よかったです。面白かったです。
でも、かなり危ういバランスの映画だなと感じました。