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2009年12月31日 15:07:54
いのちの食べかた
 映画「いのちの食べかた」のDVDを三十四日前に見ました。

 2005年のドイツ・オーストリアのドキュメンタリー映画で、監督・撮影はニコラウス・ゲイハルターです。



● 言葉のない映画

 まず、この映画の最大の特徴は、台詞もナレーションも音楽も一切ないことです。そして、ドキュメンタリー(というか映像作品)なので、ストーリーも特にないです。映像だけで92分を引っ張っています。

 その映像は、確かにインパクトのあるもので、注視の価値のあるものですが、さすがに退屈でした。

 これは、DVDで見ているという影響も大きいと思います。映画館ほど大画面ではないですし、映画館ほど集中できる環境でもないですので。

 でもまあ、インパクトのある作品であることは確かでした。

 特に、豚や牛などの家畜の解体シーンは、非常に見ごたえがありました。たぶん、そのことは作者側も分かっているらしく、家畜の飼育と解体シーンの間に、いろんな野菜の収穫シーンを挟むというシーン構成にしていました。

 さすがに、動物と植物では、映像にした時の情報量が違いますので。

 映像の中で、特に興味深かったのは、牛を殺したり解体したりするシーンです。

 牛は、殺される場所に来ると、暴れだします。殺されるのが本能で分かるのか? とも思いましたが、映像を見ていると、その牛の前を、殺された牛が流れているんですね。そりゃあ、分かります。

 そして、解体シーン。これは、牛と豚の解体シーンがあったのですが、大きさによる作業の仕方の違いが描かれていて、興味深かったです。

 牛は、豚と比べて、全てが巨大なので、道具も、移動のさせ方も違う。

 具体的に言うと、豚は簡単に半分に切れるのに対して、牛を真っ二つにするには、至難の業のようでした。なので、機械が予想以上に巨大です。他にも、細かいところで差異がありました。



● 巨大機械の形状と動き

 映像は、ヨーロッパの畜産、農業関係の現場のものです。

 その現場に入っている機械の動きを見て、最初に思い浮かべたのは「恐竜」です。

 私たちが子供時代に知識を仕入れた恐竜のイメージではなく、最近の恐竜のイメージです。

 地面を左右にスイープする様子とか、まさに竜脚類の首の動きにそっくりです。

□恐竜:竜脚類
http://www.geocities.jp/araki_dinoshop/list/Sauropoda.htm

 この映像を見ていて、なるほど恐竜の体の仕組みと動きは、こういう観点から見ると、非常に合理的だったのだなと思いました。



● 不明農作物

 映像は、説明が一切ないので、何の農作物か分からない映像もけっこうありました。ヨーロッパと、日本では採れる野菜が違うので。

 日本版DVDには、こういった説明が字幕でついていてもよかったのにと思いました。

 また、途中、地下に潜って何かを採掘しているような映像があったのですが、あれは岩塩という把握でよいのでしょうか? 何の説明もなかったので、よく分かりませんでした。



● 批判ではない

 DVDには、映像特典がついていました。

 そこで、監督が語っていたのは、「これは、農業などに対する批判ではない」ということです。

 実際、農家や畜産家の人たちは、好意的に撮影に協力してくれたそうです。

 この話を聞いた時、映像は見る人の主観に大きく左右されるのだということを痛感しました。

 この映画の映像のような「巨大産業としての農業」を好意的に見ているのか、否定的に見ているのかが、そのままダイレクトに、映像を見た感想になってしまう。

 普通、映画は、観客の前提知識の合意の積み重ねでストーリーを作っていくのですが、その枠組みを取り払うと、映像の見え方がまるで変わってしまう。

 それがよく分かりました。

 この映画は「編集で意味を作らない」という、普通とは逆の意図で編集された映画になっていました。



● 巨大ノコギリ

 以下、どうでもよい感想です。

 映画では、牛の体を解体するために、巨大な電気(?)ノコギリが出てきます。

 これが、よかったです。巨大な糸鋸のような構造で、根元から太いコードが伸びており、脂が付着するのを防ぐために、刃に水が大量に吹き付け続けられています。

 物凄い強力そうなノコギリです。

 まだ、この巨大ノコギリを使ったホラー映画を見たことがないのですが、ホラー映画の監督なら、けっこうな数の人が目をつけそうだなと思いました。

 だって、血と脂を水で吹き飛ばしながら、牛の体を分断するような道具ですよ。

 これは絶対「絵」になります。というか、そういった映像を見てみたい。



● スタッフ

 人数が少なそうな映画だなと思いましたので、スタッフロールに出てくる人の数をカウントしていました。

 数え漏れがありそうですが、五十二人ぐらいでした。

 コストパフォーマンスのよい映画だなと思いました。
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