映画「ロング・ライダーズ」のDVDを十二月下旬に見ました。
1980年の映画で、監督はウォルター・ヒル。脚本は、ビル・ブライデン他です。
主人公のジェシー・ジェームズを演じているジェームズ・キーチと、その仲間で兄を演じているステイシー・キーチも、脚本にクレジットされています。そして、この二人が製作総指揮です。
監督のウォルター・ヒルは、「48時間」(1982年)の監督・脚本でもあるようですね。
そのうち、プラッド・ピット版のジェシー・ジェームズ「ジェシー・ジェームズの暗殺」(2007年)も見て、二作の差を楽しもうと思います。
● 兄弟
この映画ですが、後で調べて知ったのですが、キャストが凄いです。劇中に血縁の兄弟が多く出てくる映画なのですが、配役も実際の兄弟で演じています。
以下、配役のリストです。
ジェシー・ジェームズ(ジェームズ・キーチ)
フランク・ジェームズ(ステイシー・キーチ)
コール・ヤンガー(デヴィッド・キャラダイン)
ジム・ヤンガー (キース・キャラダイン)
ボブ・ヤンガー (ロバート・キャラダイン)
エド・ミラー (デニス・クエイド)
クレル・ミラー(ランディ・クエイド)
ボブ・フォード (ニコラス・ゲスト)
チャーリー・フォード(クリストファー・ゲスト)
「だから、どう」というわけではないですが、凄いなと思いました。
● 義賊としての名声
映画の主人公は、銀行や鉄道を襲う強盗団の首領ジェシー・ジェームズです。彼らは少数精鋭で強盗を行います。
この強盗団は、民衆には義賊のように迎え入れられています。彼らは地元ではヒーローで、捜査の手が伸びると村人たちは、村ぐるみで彼らを匿います。
そういった状況になっている背景には、アメリカの南北戦争があります。南北戦争直後の混乱した時代が、「金持ちから金を奪う」彼らを、ヒーローに祭り上げています。
こういった「ヒーロー像」は、実際の彼らとは違う虚構です。
この映画では、その「虚構」の存在も描きますが、それはメイン・テーマではなく、あまり表には出てきません。そういった部分は表には出さず、実際の強盗団としての彼らを追っていきます。
ジェシー・ジェームズという人物は、過去に何度か映画化されているので、この描き方は作品によってだいぶ異なるだろうなと思いました。
● 冷血のジェシー・ジェームズ、熱血のコール・ヤンガー
映画の主人公はジェシー・ジェームズです。彼は頭が切れ、肝が据わっていて、いつも冷静で寡黙です。
強盗団にはもう一人、目立つ人物がいます。それが、コール・ヤンガーです。彼は女好きで、すぐにかっとなり、喧嘩も厭いません。
この二人が、強盗団の両軸になっていました。そして、映画中では「ジェームズ&ヤンガー強盗団」として、指名手配されていました。強盗団の中心は、彼らは二人に連なる兄弟たちでした。
また、映画中では、寡黙なジェシー・ジェームズのシーンよりも、派手で豪胆なコール・ヤンガーのシーンの方が目立っていました。
主人公はあくまでジェシー・ジェームズだけど、見せ場はコール・ヤンガーの方が多く、主軸のエピソードとして話が繋がっているのも彼の方でした。
なので、映画の印象としては、「ジェシー・ジェームズの映画」というよりは、「ジェシー・ジェームズを中心として時間軸を流した、コール・ヤンガーの映画」という感じでした。
ジェシー・ジェームズのシーンは、あまり盛り上がりがなかったですし。
● ピンカートン探偵社
この、ジェームズ強盗団を追うのは、警察ではなく「ピンカートン探偵社」です。
□Wikipedia - ピンカートン探偵社
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%...「探偵社」と言うと、推理小説の探偵みたいなものを想像してしまいそうですが、このピンカートン探偵社は、そういったものとは規模も内容もまったく違います。
たぶん、現代の感覚で言うと、探偵会社と、警備会社と、民間軍事会社の間ぐらいの認識が正しいのではないかと思います。
Wikipediaを見ると、「最盛期にはアメリカ合衆国の常備兵より多くの探偵を雇用」とあるので、その規模と力が窺えると思います。
そのピンカートン探偵社が、ジェシー・ジェームズたちを捕まえるために、戦いを挑んできます。そして、壮絶な攻防戦を繰り広げます。
このピンカートン探偵社との戦いが、映画の醍醐味だなと思いました。
● けっこう杜撰な銀行強盗
終盤、一つの銀行を襲うのですが、その襲い方を見て、相当杜撰な銀行強盗だなと思いました。下調べをほとんど何もしていない……。
たぶん、この頃はまだセキュリティ意識が低く、銀行強盗も武力だけで行えていたんだろうなと思いました。
そういった時代が徐々に終わっていくことで、こういった武装銀行強盗が過去のものになっていったんだろうなと思います。映画は、そういった描写になっていました。
● 終盤の銃撃シーン
終盤の銃撃シーンは、サム・ペキンパーを彷彿としました。かなり見ごたえのある、壮絶な銃撃&逃走シーンでした。
それにしても、「銃+馬」というのは、映画の緊張感を大いに盛り上げてくれますね。
馬は、画面を高速で横切ることができます。また、スローモーションで映すと、筋肉の盛り上がりが直接見えて、強烈な躍動感を与えてくれます。そして、大きな馬蹄の音は、腹の底に響きます。
そこに、銃撃の音と、血飛沫、そして一瞬のうちに生死を分かつ変化が重なると、手に汗を握らざるを得ません。
こういったシーンは、大画面で見たいものだなと思いました。
● 切れる弟、その弟に従う兄
ジェームズ兄弟は、弟がボスをやっていて、兄がその部下的な立場になっています。
何代か続いた組織では、「無駄な闘争による力のロス」を避けるために「長子相続」などのルールが意味を持ってきます。
しかし、そういったものがまだない「一代目の犯罪組織」では、「弟が実力でトップを張る」といった構造がけっこうあるのかもしれないなと思いました。生死のかかった犯罪組織では、能力主義になるでしょうから。
ギャング映画とかでも、似たような配置がけっこうありそうだなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)
南北戦争直後のアメリカ。主人公は、元南軍の兵士で、その時の仲間たちと強盗団を結成していた。彼らは、お金を貯め込んでいる銀行や、現金を輸送している列車などを襲っていた。金持ちから金を奪う彼らは、地元では義賊のように称えられていた。
そんな彼らを捕まえるために、ピンカートン探偵社が動き出した。彼らは、主人公たちが住む場所に人を派遣する。
そして、主人公の生家にガス弾を投げ込むが、手違いで家が爆発して、主人公の弟が死に、母親が怪我を負う。そのせいで、世間の同情は主人公たちに集まる。
主人公たちは、村の協力を得ながらその報復を行う。そして、主人公たちと、ピンカートン探偵社の戦争が始まった。
だが、その戦いは長くは続かなかった。ピンカートン探偵社の背後には警察がいる。主人公たちは、お尋ね者として徐々に追い詰められていく。そして、彼らは身を隠して、潜伏せざるをえなくなる。
それから数年後、彼らは再び集結して、大金を得るための銀行強盗を計画する。しかし、その銀行強盗のために得た情報は罠だった。彼らは迎撃されて、多くの死者を出す。
その逃走中、主人公は、傷を負った仲間たちを切り捨てて、兄とともに脱出する。そして、身分を偽り潜伏する。
しかし、追跡は続いた。主人公は、探偵社の雇った暗殺者に殺されてしまう。主人公の兄は出頭して、自首と引き換えに弟を埋葬する許可を得たいと口にする。