映画「地下鉄のザジ」を劇場で、一月の上旬に見ました。
1960年のフランス映画で、今回見たのは完全修復ニュープリント版。監督・脚本はルイ・マルで、主演はカトリーヌ・ドモンジョ、競演はフィリップ・ノワレです。
フィリップ・ノワレは、「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989年)の主人公です。
ヌーヴェルヴァーグ運動の先駆けとなった映画だそうですが、現代の感性では、ちょっと面白いとは思えないなと思いました。
1/9(土)〜1/22(金)で、横浜のミニシアター「シネマ ジャック&ベティ」でやっているので、映画館で見てきました。
□シネマ・ジャック&ベティ 横浜のミニシアター
http://www.jackandbetty.net/
● 子役ルイ・マルが演じる不思議少女
この映画を見ようと思った切っ掛けは、ルイ・マルが演じる主人公が非常にかわいかったからです。予告編を見れば分りますが、かなりかわいいです。
□地下鉄のザジ(youtube)
http://www.youtube.com/watch?v=JxTUXPHrFc0□地下鉄のザジ(公式 重い)
http://www.zaziefilms.com/zazie/ それで見に行ったのですが、この主人公の女の子が、かなりブラックで驚きました。悪戯好きというのを通り越して、かなり悪人です。平気で物を盗むし。
時代背景もあると思うのですが、かなり手癖が悪かったです。
私の勝手な印象としては、このザジは、フランス+不思議少女ということで、後の「アメリ」(2001年)に繋がるのかなと思いました。
● フランスの町と習俗
フランスの町は、それだけで絵になるなと思いました。ヨーロッパ映画の魅力は、こういったところにあると思います。
また、映画中印象に残ったのは、主人公たちがムール貝を食べるシーンです。ムール貝は、あんなに大量にパクパクと食べるものなんですね。
この映画を見た翌日に、ベルギー料理店に行ったら、ムール貝の白ワイン蒸しがメニューの先頭に載っていました。
ちょうどよい機会だと思い注文すると、バケツに入ったムール貝が出てきました。
なるほど、こういった料理なんですね。にんにくをよく利かせたアサリの酒蒸しのような料理でした。
● 「トムとジェリー」みたいな、スラップスティックなコメディ
さて、映画はかなりシュールです。そして、実写なのに、アニメみたいな描写が多いです。
その表現を見ていて思い出したのは「トムとジェリー」です。
子供時代、夕方に延々と放送されていた「トムとジェリー」。その表現はテンポが速くて、映像的なマジックに満ちていました。
この「地下鉄のザジ」は、「トム&ジェリー」を実写化したら、ちょうどこんな感じだろうと思うような表現でした。
しかし、その表現が効果を上げているかと言うと、だいぶ疑問です。たぶん当時は斬新で面白かったのだと思いますが、現代ではかなりシュールで退屈です。
ここらへんは、時代によって、観客の蓄積が違うので、仕方がないのだろうなと思いました。
● おじさんの容姿と仕事
映画では、ザジのおじさんが出てきます。彼の職業が何なのかが、小さなミステリーになっています。
そのおじさんの容姿なのですが、背が高くて、ちょっとがっしりめのおっさんという感じです。
そんなに格好良くないと思うのですが、でも映画中では、ハンサム・キャラとして扱われており、女性に異様にもてます。これがかなり違和感がありました。
当時のフランスでは、ああいった容姿がもてたのかと思いました。
そのおじさんの職業は、映画の後半で明らかになります。けっこう斜め上の職業です。そして、その仕事をしている時の姿を見たいと思い、かなり期待します。
こういった小さなミステリーが入っているのは、映画を牽引する上で有用だなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です。(だいぶ端折って、中盤の終わりぐらいまで書いています)
主人公は十歳の女の子。彼女は母親とともにパリにやって来た。母親は、恋人とともに町に消え、少女は母の弟に預けられる。彼女は地下鉄に乗りたいと思っていたが、ストで運行していなかった。彼女は荒れる。
主人公は、叔父の友人のタクシー運転手とともに、叔父の住むアパートに移動する。そこには寡黙で美人の叔父の妻や、神経症気味の家主、ふわふわした感じのタクシー運転手の恋人などがいた。
主人公は周囲の目を盗んで、外に遊びに出る。しかし、地下鉄はやはり動いておらず、彼女は途方に暮れる。そんな彼女の前に、謎の男が現れた。
彼女はその男と食事をして、彼が買った子供向けのジーンズを盗んで帰る。そのことで彼女は、謎の男に追われることになる。
主人公は、叔父とパリ観光を始める。そして、様々なトラブルが起こる。時間が経ち、叔父は仕事に行かなければならない時間になる。主人公は、叔父の仕事を知らなかった。
叔父は職場を目指し、はぐれた主人公は彼を追う。そして、様々な人々が、その場所を目指し始める……。
● ザジと言えば……
個人的には、車田正美の「雷鳴のザジ」を思い出します。
関係あるのかないのか分りませんが、「ザジ」繋がりということで、書いておきます。