2009年の読書のまとめ1月分です。
星による評価の基準については前述の通りです。
この月は、実家への帰省があったので、その間にまとめて本を読んでいました。
● 2009年01月(11冊/計11冊)
■ 01 新 脳の探検 下 脳・神経系の基本地図をたどる(著:フロイド・E・ブルーム他/監訳:中村克樹、久保田 競)
(★★☆☆☆)
ブルーバックスの、二冊組みの分厚い脳の本。勉強にはなったのですが、ちょっと読みにくいというか、眠くなりました。
この本を読むことで、専門用語が一定比率を越えると(情報圧縮率が高いと)、本を読む速度が遅くなり、そのぶん話の展開が遅くなり、眠くなるのがよく分かりました。
内容自体はカラー図版が多くて良書です。でもこれ、ブルーバックスのサイズではなく、もうちょっと大きなサイズで出した方がよいです。そうすれば、見開きで読みやすくなり、読書速度も上がり、そのぶん眠くならないと思うので。
■ 03 ある日どこかで(著:リチャード・マシスン、訳:尾之上 浩司)
(
★★★★☆☆)
よかったです。普段、恋愛物はそれほど好みではないのですが、これは別格です。
切なく、ロマンティックで、悲しい物語です。
また、「脳」の使い方も面白かったです。「恋とは脳のエラーである」というのが、私の考えなのですが、その「エラー=通常とは違う動作」を、本書は徹底的に使い倒しています。
ラストも含めて、虚構と現実の狭間の、ギリギリのラインに話を成立させています。そして、話に余韻を残すことに成功しています。そこも上手いなと思いました。
■ 04 徹底図解 脳のしくみ(監修:中村 克樹)
(★★☆☆☆)
図解による脳の解説です。この数日前に読んだ「新 脳の探検」の監訳者と同じ人が監修です。内容が被っているなと思いました。まあ、全然違っていても、それはそれで困るのですが。
■ 05 言葉を使うサル 言語の起源と進化(著:ロビンズ・バーリング、訳:松浦 俊輔)
(★★☆☆☆)
どこまで突っ込むのかなと思って読み始めたのですが、踏み込み方が甘かったです。推測の域を出ていません。
私が期待していたのは、「ここまでは、こういう証拠で分っている」という部分でした。そういう部分が希薄だったので残念でした。
■ 06 シリーズ脳科学3 言語と思考を生む脳(監修:甘利 俊一、編者:入夾 篤史)
(★★☆☆☆)
ここ数年のテーマである「言語」に絡んだ本。そこまで目新しい情報はありませんでした。
■ 06 漫画の教科書シリーズ No.02 萌えキャラの上手な描き方(神吉、くろば、白玉団子)
(★★☆☆☆)
最近の萌え絵の文法も学んでおこうと思って購入。でも、手を動かさずに頭で読んだだけなので、そのうち見ながら、実際に模写してみないといけないです。
■ 07 理工学系からの脳科学入門(編:合原 一幸、神崎 亮平)
(★★☆☆☆)
神経細胞と機械の融合や、コンピュータによる脳のシミュレートなどを扱った本。一昔前なら、マッドサイエンティスト呼ばわりされそうな実験とその結果がいろいろと載っていました。
■ 07 言語の興亡(著:R.M.W.ディクソン、訳:大角 翠)
(★★☆☆☆)
ここ数年のテーマである「言語」に絡んだ本。そこまで目新しい情報はありませんでした。
■ 11 夏への扉(著:ロバート・A・ハインライン、訳:福島 正実)
(
★★★★☆☆)
有名なSF小説。これは軽くて楽しくてよい本です。そして、明るく前向きになれる本です。未来が輝かしい頃だった時代の高揚感を覚えました。また、「発明家」という職業が憧れだった少年時代を思い出しました。
中学生か高校生時代に読んでおきたかった本です。そして、今読んでも楽しめる一冊です。
■ 24 古今和歌集(一)全訳注(久曾神 昇)
(
★★★★☆☆)
今年のチャレンジのスタートです。最初は四苦八苦しながら読み始めたのですが、筆頭編集者の紀貫之の構成意図が分ってからは俄然面白くなりました。
和歌の美しさとともに、構成美を感じる歌集でした。そして、講談社学術文庫の編集もよかったです。講談社学術文庫は、この手の古典の文庫本の中では、出色の読みやすさを誇っています。
書評などではあまり評価されない部分ですが、そこは大いに評価したいところです。
■ 30 ループ(鈴木 光司)
(★★★☆☆)
「リング」「らせん」と読んでいて、かなり時間を置いての本作です。この前の年に、友人のryota氏より「読んで」と言われていたので読みました。
このシリーズは、一作ごとにテイストと仕掛けを大きく変えてきますね。そして、「ループ」はかなり独立した物語になっていました。いや、独立していないのですが、位相が大きく違っていますので。そして、この手の仮想現実物としては、かなりよく出来ていました。
ただし、その「出来」は、仮想現実の内側の作り込みではなく、その外の世界の人間の丁寧な描写によって支えられていました。
この小説は、話の筋を書くと数行ぐらいで終わるような短いものです。それを、心の機微をたどるプロット運びで、かなり厚いページ数にしています。そして、主人公と同じ感情を、読者が味わえるようにしています。その試みは成功していると言えるでしょう。
感情を共有するには、これぐらいの丁寧な過程の積み重ねが必要なんだな。そう思わせてくれる一冊でした。