映画「裏窓」のDVDを二十日前に見ました。
1954年の映画で、監督はアルフレッド・ヒッチコック、脚本はジョン・マイケル・ヘイズ、主演はジェームズ・スチュワート、ヒロインはグレイス・ケリーです。
面白かったです。
● 限定設定の妙
この映画の設定の妙は、主人公が足を骨折していて、部屋から出られないことです。
そういった状況のなかで、主人公は、日がな一日、アパートの裏窓から、中庭の周りの家々を覗いています。
彼はカメラマンで好奇心が強く、それぞれの家の人々の様子を見ながら暇を潰しています。そして、周辺住人の謎の失踪と、殺人事件らしき断片的証拠を入手します。
ここまででかなり面白いのですが、さらに上手いのは、脇役の使い方です。
主人公は動けないので、代わりに、恋人や看護婦が、手足となって協力してくれます。でも、主人公自身ではないので、ちょっと突っ走ったりして、ハラハラドキドキさせられます。
この、「自分は動けない」「代わりに動いてもらう」「おかげで、思うようにならず、やきもきする」という部分が、非常に上手くできているなと思いました。
● 周辺住人のドラマ
また、映画の作りとして上手くできていると思ったのは、周辺住人のドラマの展開です。
映画は、殺人事件のサスペンスだけでなく、様々な周辺住人のエピソードを間に挟みます。
新婚の夫婦や、自殺しかけている婦人や、作曲に悩んでいる音楽家や、若手の女性ダンサーなど、窓から見える部屋の人々のドラマが、少しずつ展開していきます。
この部分に、笑いがあったりして、飽きさせません。
緊張感だけで二時間持たせるのではなく、こういった要素を挟んでいるのは、見る側も退屈せずに済むし、人によってはお気に入りのエピソードができたりするので、上手い演出だなと思いました。
● グレイス・ケリーの美しさ
さて、この映画で特筆すべきは、グレイス・ケリーの美しさです。
また、美しいだけでなく、おしゃまで可愛いです。
単なるお人形さんではなく、積極的に人生を楽しんでいる女性の明るさが伝わって来る美しさになっています。
これは、いい女性だなと思いました。
また、映像特典では、グレイス・ケリーに関するいろんな人のインタビューが載っていました。彼女は美しいだけでなく、聡明で、周囲に非常に愛されていたようですね。
そのエピソードを聞いて、往時の本人を見てみたいなと思いました(その頃、まだ私は生まれていませんでしたが)。
● 男と女
映画では、主人公のカメラマンと、服飾関係の事業を営むヒロインの間で、結婚する上で、どちらが職を捨てるかの駆け引きが行われます。
「うわ、この二人、どちらも妥協する気ゼロだ」と思いました。
このままでは破局だなと思って見ていると、殺人事件があり、その捜査で二人は一致団結します。
その様子を見て、「ああ、この二人は、本質的には同じタイプの人間なんだ」と思いました。
そこから少しずつ、妥協が始まり、ヒロインは主人公の仕事に付いて行ってもよいという話に傾いてきます。でも、主人公は、お嬢様のヒロインが、世界の辺境や危険地帯に行くのは無理だと言って突っぱねます。
でも、映画を見ていると「このヒロインなら、案外大丈夫じゃないのか?」というおてんばさを発揮していきます。
その様子を見て、主人公も、ヒロインの知らなかった面を発見していきます。
そうやって、ぐっと接近して、最後はハッピーエンドに向かうのですが、最後の場面でくすっとしてしまいました。
主人公より、ヒロインの方がちょっと上手(うわて)です。妥協したように見せかけて、実は主人公を掌の上で躍らせている。いいエンディングだなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(大きなネタバレはなし。中盤まで書いています)。
主人公はカメラマン。彼は足を骨折して、部屋で療養することになる。彼は早く仕事に復帰したかったが、動けないのではどうしようもない。
彼には恋人がいる。彼女はお嬢様で、華やかな世界で活躍している。二人は愛し合っていたが、互いの道を譲らずに、結婚は難しい雲行きだった。
そんなある日、主人公は、裏窓から見ていた隣人の様子がおかしいことに気付く。病気で寝たきりの妻を看病していた夫が、深夜に何度も大きな荷物を持って外出していたのだ。
翌日、部屋から妻の姿が消えていた。さらにその夫は、ノコギリや包丁を新聞紙で包み、処分していた。
妻を殺して、パーツわけして運び出したのでは? そう考えた主人公は、友人の刑事を呼ぶが取り合ってもらえない。
その話を聞いた恋人と看護婦は、主人公の手足となって捜査をすることを提案する。三人は、主人公の部屋を捜査本部にして、殺人事件を暴こうと奮闘する。