映画「ハメット」のDVDを、七月上旬に見ました。
1985年の映画で、監督はヴィム・ヴェンダース。脚本はロス・トーマス、デニス・オフラハティ。原作はジョー・ゴアズ。製作総指揮はフランシス・フォード・コッポラ 。主演はフレデリック・フォレストです。
97分の短めの映画です。ハードボイルドな映画でした。大作ではないですが、それなりに楽しめました。
● ハメットとは?
この映画の主人公は、ハメットという人物です。ハメットが誰かと言うと、ダシール・ハメットです。
ダシール・ハメットの代表作は、「血の収穫」「マルタの鷹」です。彼は、ハードボイルドを確立した人物だそうです。
彼は一時期、ピンカートン探偵社の探偵として働いていたこともあります。
この映画の原作は、ジョー・ゴアズの同題小説です。事件自体はフィクションです。しかし、探偵社をやめたハメットが、元の同僚に仕事を依頼されるなどといった設定は、現実を活かしています。
というわけで、映画公開当時のアメリカ人なら、題名と主人公の名前を見るだけですぐにどんな話か分かったはずです。
日本で言うなら、横溝正史とか江戸川乱歩とかが主人公といった感じでしょうか?
でも、私はよく知らずに、後で調べて理解しました。
ハメットの作品なんかを読んでいると、面白さも違ってきたかなと思いました。
● 謎解き
この映画の謎解きは、チャイナタウンでの中国人美女の失踪と、金持ちの謎の死です。
話は、主人公が調べていく過程で、徐々に明らかになってきます。
どんでん返しは、謎自身にあるというよりは、別の場所にありました。話は、事実が明らかになってくると、徐々に全貌が見えてくるという、シンプルな構成でした。
ここらへんは、謎自体を楽しむミステリーというよりは、主人公のハードボイルドを楽しむ映画だなと思いました。
● 謎の中国美女
えー、謎の中国美女が「美女」ではなかったです。
不細工とまでは言いませんが、決して「美女」ではないです。なので、何だかなと思いました。テンション下がりまくりです。
この手の物語は、男と美女が物語の核になります。その美女が「美女」でないと、いまいち気合が入りません。
欧米人に、アジア人の美醜は分からないのかなと思いました。
● 愛されキャラ
映画の主人公のハメットは、やたらと街の住人たちに愛されています。行く先々で、みんなに顔を知られていて、好意的にされます。
この描写は、けっこう珍しいなと思いました。
街のプチ名士という感じなのでしょうか。いいなあ、ああいう街での立ち位置はと思いました。
あと、このハメットさんは、しゃべり方が、イングロリアス・バスターズのブラッド・ピットみたいでした。それがやたらと気になりました。
● ヴィム・ヴェンダース
監督のヴィム・ヴェンダースは、「ベルリン・天使の詩」(1987)を撮っています。
個人的には、「ベルリン・天使の詩」の方が、数倍面白いと思いました。
まあ、本作では、製作のコッポラとだいぶ確執があったようですし。なかなか思うようには撮れなかったのかもしれません。
□allcinema - 映画 ハメット
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=18430
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。ラスト直前まで書いています)。
主人公は元探偵の小説家。彼は、波止場で美女の裏切りにあうという探偵小説を書いていた。
そんな彼の元に、昔同じ探偵社で働いていた人間がやって来る。主人公は、彼に世話になっていた。その元上司は、小説は自分がモデルだなと言い、結末が違うなと言う。
彼は、主人公に仕事を依頼する。中国娘の捜索だ。そして二人はコンビを組んでチャイナ・タウンに向かう。
二人は尾行にあい、離れ離れになる。元上司は姿を消して、主人公は事件の背後関係を調べようとする。だが、様々な圧力や暴力を受ける。
そんな彼の元に、探していた中国娘が現れる。主人公は、彼女を置いて、事件をさらに探る。そして、少女売春と金持ちへの脅迫が行われていたことを知る。そして中国娘が姿を消して、死んだという報せを受ける。
主人公は、富豪たちの許へと連れてこられる。脅迫をしてきた人間が、現金の受け渡しに主人公を指名してきたからだ。
主人公は金を持って波止場に向かう。その場所の雰囲気は、主人公がタイプしていた小説に似ていた。
現金の受け取りには、中国娘が現れる。彼女は自分の死を偽装していた。そして彼女の背後には、元上司の姿があった。彼は事件を調べているうちに全貌を知り、中国娘に肉薄して、脅迫する側に回っていた。