映画「サンダーボルト」のDVDを七月中旬に見ました。
1974年の映画で、原題は「THUNDERBOLT AND LIGHTFOOT」。監督・脚本はマイケル・チミノ、主演はクリント・イーストウッドです。
● イーストウッドの空気を感じる映画
何と言うか、この映画はこれに尽きると思います。監督こそイーストウッドではないですが、この映画はイーストウッドが監督したと言われても不思議に思わない映画です。それぐらい、イーストウッドのテイストを感じます。
この映画は、イーストウッド映画に特徴的ないくつかの要素が出てきます。
・駄目人間。
・旅。
・擬似家族。
主人公は、基本的に駄目人間です。一本芯が通っていたりしますが、それでも世間からのあぶれ者です。
そういった主人公であるイーストウッドの魅力を中心に、旅の間だけ擬似家族が形成されます。そして、世間の人があっと驚くような、ちょっと奇抜なことをします。
また、イーストウッド映画のもう一つの特徴も備えています。それは神と銃です。
主人公であるサンダーボルトは、最初に教会で宣教師をしています。しかし実は過去に戦争の英雄で、仲間たちと銀行強盗をしたことのある過去を持ちます。ダーティーハリーなどで見られる、神と銃のモチーフが、ここでも出てきます。
それだけではありません。独特のユーモアも映画の中に溢れています。真面目なんだけど、どこかずれていて、なぜか憎めない。そういったシーンがふんだんに盛り込まれています。そして最後に少しホロリとさせられます。
この映画は、そういったイーストウッド映画の要素が存分に詰まっています。
そのおかげで、派手な映画ではありませんが、妙に心に残る映画でした。もう一度見てもいいかなと思う、よい映画でした。
● 俳優
イーストウッドの相方であるライトフットを演じているのは、若き日のジェフ・ブリッジスです。
最近ですと、「クレイジー・ハート」(2009)でアカデミー賞主演男優賞に輝いています。
私の友人が多く見ていそうな映画だと、「アイアンマン」(2008)で、オバディア・ステイン(会社の幹部)を演じています。
この、ちょっと背伸びした感じで透明感のあるライトフットと、世間の酸いも甘いも噛み分けて、達観している感じのサンダーボルトとの対比がよかったです。
また、序盤にイーストウッドの命を狙うレッド役の、ジョージ・ケネディの存在感も素晴らしかったです。
彼は、腕っ節が強く、ちょっと頭が弱い感じの人間です。サンダーボルトに対して怒っていて憎んでいるんだけど、実は彼に憧れていて好きで好きでたまらないという役どころです。
この映画は、男たちの擬似家族ものですが、恋愛物にも似たような雰囲気を持っています。
サンダーボルトという男に憧れる、ライトフットとレッドの恋愛劇にも見えるからです。
友情と愛情の境界が溶け合い、大きく広がるような、不思議な開放感を味わわせてくれる映画でした。
● 監督
この映画の監督は、マイケル・チミノです。代表作は「ディア・ハンター」(1978)です。
「ダーティハリー2」(1973)の脚本がイーストウッドに気に入られて、翌年「サンダーボルト」で映画監督になりました(彼は、この一年前の1972年の「サイレント・ランニング」の脚本も手掛けています)。
「ダーティハリー2」→「サンダーボルト」という経緯があったので、この映画のトーンが、非常にイーストウッド色なのかなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(中盤までのネタバレあり。映画の折り返しぐらいまで書いています)。
主人公は教会の宣教師。彼のところに、殺し屋がやって来る。主人公は教会を逃げ出し、道で出会った車に乗り込む。その車は、車泥棒が盗んで逃走中のものだった。そして、宣教師と車泥棒の奇妙な旅が始まる。
主人公は壮年の男である。宣教師というのは仮の姿で、昔は荒事をこなしていたことがうかがわれる。
相棒となった男はまだ若い。彼は世の中をぶらぶらしながらわたっており、自分はそれなりに何かが出来る人間だと思っている。
彼らは、行く先々で車泥棒をしながら、細々と食いつなぐ。そんな主人公を、二人組みの殺し屋が追い続ける。
主人公は、相棒に過去を明かす。実は彼は、世間に名を馳せた銀行強盗だという。その相棒の一人が死に、残りの二人が刑務所に入り、主人公は金をある場所に隠したという。
追ってきているのは、その刑務所に入り、出所してきた男たちだという。
相棒は、主人公が有名人だと知り、驚きかつ喜ぶ。自分はそんな男の相棒なのだと思い、鼻高々になる。
主人公は金を学校の黒板の裏に隠したという。二人は金を取りにその場所に行く。しかし、主人公は呆然とする。学校は建て替わっており、金はなくなっていた。
追ってきた殺し屋に主人公たちは捕まる。そして、金がないことを殺し屋たちは知る。彼らは目的を見失ったまま、主人公たちに同行する。
そんな彼らに、若い相棒が提案する。「金がないのならば、もう一度銀行強盗をすればいいじゃないか」
主人公は、その案を否定する。前回成功したのは、死んだ仲間が電子工作のプロフェッショナルだったからだ。しかし、他の仲間たちは、若い相棒の案を押す。
そして四人で、かつて入った銀行に、再び強盗を仕掛けることになった……。