映画「JUNO/ジュノ」のDVDを七月下旬に見ました。
2007年の映画で、監督はジェイソン・ライトマン、脚本はディアブロ・コディ、主演はエレン・ペイジです。
「インセプション」(2010)で、エレン・ペイジがよかったので、遡って見てみました。なかなかよかったです。
● 16歳で妊娠した女子高生
主人公は、16歳で妊娠した女子高生です。彼女が妊娠して、中絶を考えて、そしてやめ、里親を探して出産に至るまでの9ヶ月を描いた映画です。
主人公の女の子は、わりとあっけらかんとした性格です。この映画では、妊娠することで社会の異分子になった彼女と、周囲の人々との関係を通して、社会の状態や、人々の考え方などを浮き彫りにしていきます。
「社会に対する異分子」の目を通して社会を描くのは、よくある手法ですが、その「異分子」を妊娠した若い少女にしているところが、この映画の特徴かなと思いました。
また、この主人公の少女が、あまり湿っぽくなく、どちらかというと男性的な性格や趣味であるために、変なメロドラマになっていなくてよかったです。
これを、同じ設定で日本でやると、お涙頂戴の感動作にされてしまいそうだなと思いました。
● 里親
主人公が里親として見つけてくる若い夫婦が、この映画では非常に印象的でした。
妻の方は、いいところ出で、「家庭の中での母」という役を夢見て、出産できずに挫折した人です。美人で、潔癖で、完璧主義で、子供というものに過大な期待を抱いています。
彼女は、いかにも女性的な考え方と性格を持った人です。
対して夫は、CMミュージシャンとして成功した人で、お金は持っているけど、中身は子供の心を失っていない人です。
彼は、妻の希望を入れて、子供を養うことを決めましたが、子供に対してはあまり期待をしておらず、それよりも自分の趣味にもっと時間を割きたいと考えています。
この二人の間に、男性的な性格や趣味の主人公が入ってきます。彼女は、里親の男性にとって、女性である前に、趣味を分かち合える友人となります。
男性がパートナーを見つける際に、「自分とは全く価値観の違う“女”」が欲しいのか、それとも「自分と価値観が同じ“友人”」を欲しいのかは、重要だと思います。
前者なら、美人で、その彼女のためにお金をかけるべき女性を選ぶべきです。
後者なら、容姿よりも性格を重視して、互いの共通の価値感のためにお金をかける女性を選ぶべきです。
里親の夫は、主人公と出会うことで、この選択肢の間で揺れ動きます。これは、男性の中でも、趣味を持つ人間なら、共感できる部分だろうなと思いました。
でもこの部分は、女性の何割かは、全く共感できない部分だろうなとも思いました。
そういった意味で、「若年の妊娠」をテーマにしていますが、男性側の視点でも、いろいろと考えさせられる映画でした。
● 俳優
エレン・ペイジは、「インセプション」とはだいぶ方向性の違う演技でした。でも、なかなかキュートで可愛かったです。
何より、サバサバした性格と、趣味の方向性が、「男性が選ぶ女性の一つのパターン」だなと思わせてくれました。
男性は、けっして美人の女性ばかりを選ぶわけではないと感じさせてくれるキャラクターでした。
また、主人公の義母役のアリソン・ジャネイも印象に残りました。どこかで見た人だなと思ったら、「ザ・ホワイトハウス」のCJ・クレッグ報道官でした。
彼女の役どころもよかったです。結婚はしているけど、自分の仕事を持っていて、精神的に独立している人です。
先の里親の妻もそうですが、様々に配された登場人物が、それぞれの考え方や価値観を明確に持っていて、なるほどよくできているなと感じさせる内容でした。
● ジェイソン・ライトマン
監督のジェイソン・ライトマンですが、「サンキュー・スモーキング」(2006)、「マイレージ、マイライフ」(2009)の監督です。
これは、「マイレージ、マイライフ」も早く見なければと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(若干ネタバレあり。終盤の直前ぐらいまで書いています)。
主人公は16歳の少女。彼女は、興味本位で友人とセックスして妊娠してしまう。
彼女は中絶を考えていたが、中絶反対反対運動をしている女性の友人の影響で、中絶を断念する。そして、里親を探す。
主人公は理想的な里親を見つける。優雅で美人な妻、成功してお金持ちな夫。これなら申し分ないと考える。
しかし、子供を手に入れるとなった里親たちの関係は次第にぎくしゃくしてくる。主人公は、里親の夫と趣味が合い、頻繁に会いに行く。
里親の夫は、結婚生活に満足していなかった。そして、趣味が合う主人公に次第に心引かれていく。
そして、出産が近づいてきた時、里親夫婦の関係に問題が発生した……。