映画「ソルト」(SALT)を、映画館で八月上旬に見ました。
2010年の映画で、監督はフィリップ・ノイス。脚本はカート・ウィマー。主演はアンジェリーナ・ジョリーです。
それなりに面白かったのですが、同時期に見たのが「インセプション」(2010)だったので、相当かすんでしまいました。おかげで、感想を書き忘れていました(映画館で見たら、他の感想がたまっていても、通常は先に書くので)。
● なぜ今冷戦物?
映画で一番疑問に思ったのはここです。なぜ、2010年に、米ソの冷戦物をやるのだろうかと?
いちおう、敵対国は「ロシア」となっていますが、プログラムを見ると、主人公の誕生は1975年。ソビエト連邦解体は1991年。その時、主人公は16歳。
なので、まあ、映画の設定を踏まえると、「米ソ冷戦物」で間違いないと思います。
映画のできはよい方だと思うのですが、このテーマの選定がよく分かりません。時代に合っていないというか、かなり謎でした。
私が知らないだけで、現在、過去の冷戦が非常に重要な局面を迎えたりしているのでしょうか?
まあ「スパイ物」をやりたかったみたいなので、こういった構成になったのでしょう。最近、純粋なスパイ物をやろうとすると、どうしても相応しい舞台がないですので。
でも、テーマは、もう少し現代的な方がよいだろうにと思いました。
● テンポのよいサスペンス・アクション
テーマには謎を感じましたが、内容自体は、テンポのよいサスペンス・アクションで面白かったです。
話がガンガン進み、見せ場がどんどん出てきます。
舞台も、屋外や屋内、高所に地下、近代的な場所にクラシカルな場所など、バラエティに富んでいます。ここらへんは、丁寧な、いい仕事だなと感じました。
● アンジェリーナ・ジョリーという「力」の象徴
アンジェリーナ・ジョリーは強そうですね。ムキムキではなく、カマキリ型の「強そう」なのですが、それでもかなりパワフルに見えます。
でも、やっぱり「女性」だなと思う場面もありました。それは、アンジェリーナ・ジョリーが、変装して男性になるシーンです。
男性にすると、かなり華奢で、可愛らしい女性の容姿であることが逆に目立ちます。
男性化することで、「ああ、女性なんだな」というところが強調されていました。これは、不思議だけど、そういったものなのだろうなと思いました。
以下、若干ネタばれありの感想です。
● ○部作の1話目
プログラムにも書いてありましたが、これは「○部作」の1話目として書かれた物語のようです。
つまり、主人公が既存の組織から離れて、一匹狼として活躍を始める話です。
というわけで、続編は作られるのかなあと思いました。冷戦物なので、どうなるのか謎ではあるのですが。
● 草
さて、この映画は「草」物です。忍者の「草」です。それが、この映画の中心的な設定になります。
忍者の「草」と言えば、私は「リングにかけろ」の河合を真っ先に思い出します。あれは、かなり超展開だったのですが、それでも、私の中で、忍者の「草」という存在を強烈に印象付けたのは、あの話です。
しかしまあ、リンかけには、車田正美のその後の作品のエッセンスが大量に詰まっていますね。映画から、話は逸れてしまいますが。
また、この映画を見ながら思い出したのは、浦沢直樹の「モンスター」です。あれも、ある意味「草」の物語ですし。
というわけで、過去の「草」系の作品を思い出しながら、この映画を鑑賞しました。
● 粗筋
以下、粗筋です(逆転、逆転が多いシナリオなので、ネタばれになりやすいので、中盤に突入したあたりぐらいまでしか書かないようにしておきます)。
主人公はCIAの女性職員。彼女はかつて、北朝鮮で捕まり、夫の働きかけで救出された過去を持つ。
ある日、CIAにロシアからの密告者がやって来る。彼は、秘密に育てられたスパイが、アメリカに潜入しており、訪米中のロシア大統領を暗殺すると言う。そのスパイがソルトという名の、主人公であると告げる。
彼女は容疑者扱いされて窮地に立たされる。彼女は、夫に危難が及ぶことを恐れて、CIAの建物を抜け出して家へと向かう。
しかし、夫は何者かに連れ去られていた。そして、CIAの手から逃れた主人公は、スパイ容疑で追跡されることになる。彼女の上司は、主人公を守ろうとするが、捜査官たちは彼女は黒だと判断して追跡する。
主人公は、逃亡を成功させて姿をくらませる。
訪米したロシア大統領は、旧知のアメリカ副大統領の葬儀に出席する。その場に、姿を消していた主人公が現れる。彼女はロシア大統領に襲いかかる。
暗殺を終えた主人公は、ロシアから来た者たちが待つ場所に向かう。そして、その場で、夫と再び対面する……。