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http://www.socialnetwork-movie.jp/
2011年02月17日 23:03:46
 映画「ソーシャル・ネットワーク」を映画館で、一月下旬に見ました。

 2010年の作品で、監督はデヴィッド・フィンチャー、脚本はアーロン・ソーキン。主演はジェシー・アイゼンバーグです。

 世間の前評判的には「マーク・ザッカーバーグは嫌な奴」という感じでしたが、そんな単純は話ではありませんでした。

 面白い、面白くないの評価だと、確実に面白い。そして、色々と語る点の多い映画でした。



● コントラストを付けた主人公の描写

 この映画では、冒頭に、超絶マシンガン・トークで、主人公の人間的に嫌な面を、これでもかと見せ付けます。

 どういったことを言うかというと、主人公は彼女に向かってこんなことを言います。

 君は僕みたいに頭のいい人の行く学校に行っていない。だから、勉強なんてやる必要はないじゃないか。

 まあ、当然の結果として、彼女は激怒して、そこで交際は終わります。そして、主人公はなぜそうなったのか理解できません。

 彼は、その腹いせとして、ハーバード大学の寮をハッキングして、女の子の写真をぶっこ抜いて、その顔を比べて投票させるサイトを作ります。

 このようにして、主人公が人間として何かが欠けているということを、畳みかけるようにして描写します。

 まあ、実際「何かが欠けている」のでしょう。

 この冒頭が非常に鮮烈過ぎるために、この映画の感想の大半が「この部分の主人公のイメージ」で終始しているのだと思います。でも、そのことは、少し惜しいなと感じました。

 実際には、ここでキャラ立てをした後、その後の展開で「それだけではない人間性」を細かく積み上げていき、「たった一人の親友の喪失」という心の傷を、この映画では描き出します。

 でもまあ、比重的には、人間性の描写が、冒頭の部分に引きずられるのは仕方がないなあと思います。

 基本的にこの映画の主人公は、無表情で、ほとんど自分の感情を口にせず、ただむっつりしているだけの存在です。

 そのため、状況証拠から「彼はこう思っていたのだろう」と推測できるだけです。なので、外面だけ見れば、「品性に欠けた存在」というくくりで、間違いないだろうと感じました。



● プログラムを書くということ

 さて、そういったネガティブなイメージの強い主人公ですが、実は大いに共感させられた部分があります。

 それはどこかと言うと、冒頭が過ぎたあと、映画の前半の「コードを書きまくるシーン」です。

 何というか「うずうずとなり、自分もコードを書きたくなる」シーンが連続します。

 この辺りは、コードを書く人間の性向というか、集中した時の感覚が、よく描写されていると思いました。

「いいから邪魔するな。俺にコードを書かせろ!」という、昼夜を問わず数日間ロックオンし続ける没頭具合が、ビンビンと伝わってきました。

 あの感覚、よく分かる。

 なので、実はこの映画を見ている最中、けっこう主人公に共感しながら映画を見ていました。



● メンターの登場

 さて、この映画には主人公のメンターとなる人物が出てきます。

 それは、ナプスターの創始者の一人、ショーン・パーカーです。彼がフェイスブックの存在に気付き、そこに金の成る木の臭いを嗅ぎ取り、急速に接近してきます。

 そのショーン・パーカーに主人公は魅了され、世界展開していくレールに乗ります。

 このショーン・パーカーが、悪魔じみていてよかったです。まあ何というか、ソーシャル・クラッシャーとでも呼んでよさそうな感じの人物でした。

 彼は「山師」という言葉がぴったりの人物で、投資家を巻き込んで、フェイスブックを世界に展開していきます。

 この人物が出てきてから、この映画はブレーキの壊れたスポーツカーのような感じになり、怒涛の勢いでバブル状態に突入していきます。



● アイデアの価値

 映画では、主人公に最初にフェイスブックのアイデアを与えて、そのサイトの構築を打診したエリートたちが出てきます。

 彼らは、主人公によるアイデアの盗用に激怒し、弁護士を通して抗議などをしますが、主人公に無視されます。

 彼らは、親のコネを利用して、学生の倫理規定に違反すると学長にも訴えます。しかし、学長に痛烈に切り捨てられます。

 それは、「親のコネを利用するなんて、正々堂々としていない」という理由と「子供の戯言に付き合っていられない」という二つの理由からです。

 このシーンは、一つの見方としては「エリートの傲慢に対する鉄槌」と取ることができるでしょう。実際、この映画を見た人の多くは、そう解釈すると思います。

 しかし、私は違う受け取り方をしました。それは「新しいビジネスの価値を、古い人は欠片も理解していない」という見方です。

 後のフェイスブックの資産価値を、私たちは知っています。その発端が「アイデアの盗用」だとしたら、それが大きな問題を抱えていることにも気付いています。

 実際、この問題では訴訟が行われ、数十億円におよぶ和解金が支払われています。

「学長は、その経済価値を全く理解していなかった」

 私には、そちらの方が、強く印象に残りました。



● 友情の破滅

 この映画のキーになるのは、主人公の唯一の友人との決裂です。

 その決裂の大きな理由が、主人公の独善と裏切りにあります。

 ただ、主人公にとって、彼が本当に親友だったかどうか、疑わしい部分はあります。

 なぜならば、彼はコミュニケーション障害を持っているように見えるからです。単に、手近にいる人間として、友人を利用していただけではないかという疑いも拭い去れません。

 しかし、得る物の対価として、かつて得ていた物を失うというストーリーは分かりやすく、映画はこの部分を軸にして締められていました。

 主人公はこの映画の終盤、大きな孤独の中に置かれます。でも実際のマーク・ザッカーバーグは、それほど孤独ではないのではないかと思います。

 去っていく友人がいれば、やって来る友人もいる。

 映画では、キーとなる人物しか描かれませんでしたが、そうでない人物もけっこういるのだろうなと思いました。



● 破竹の勢いの熱気

 さて、この映画の最大の魅力は、「破竹の勢いの熱気」だと思います。

 若さの爆発というか、世の中に認められたいという強烈な自我というか、自分は正しく評価されていないという怒りというか、そういった有象無象の熱気です。

 それが、フェイスブックというサービスに乗って、爆発するようにして世界に広がっていく。その部分がこの映画の面白さになっているなと思いました。

 また、そういった「勢力の拡大」を、「ユーザー数○○人」という、節目のイベントで明確に示せるのは、こういった題材の面白さだなとも思いました。



● 冒頭の寮のハッキングシーン

 最後に少しだけ。

 映画の冒頭で、大学の寮に次々とハッキングしていくシーンがあります。このシーンですが、「もっと効率的な方法があるよな」と思いました。

 これは、映画の演出的な問題だと思うのですが、それぞれの対象で、一つずつ違う方法を挙げてクリアしていくのですが「いや、それは、こうした方が……」という部分がありました。



● デヴィッド・フィンチャー

 ざっと調べてみましたが、けっこう見ていますね、この人の監督作品。見た映画は○、未見の映画は×で、表にしてみました。

○ ソーシャル・ネットワーク (2010)
○ ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (2008)
○ ゾディアック (2006)
○ パニック・ルーム (2002)
○ ファイト・クラブ (1999)
× ゲーム (1997)
○ セブン (1995)
○ エイリアン3 (1992)

 「ゲーム」だけ見ていないですね。見る映画リストに追加しておきました。



● アーロン・ソーキン

 「ザ・ホワイトハウス」の脚本の人です。この人の脚本の映画は、まだあまり見ていないので、徐々に見ていくようにしていこうと思います。



● 粗筋

 以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。

 主人公はハーバード大学の学生。彼はプログラムを書くことは得意だが、対人関係には問題の多い男だった。

 彼は、他人を馬鹿にするようなことを口にしても、それがなぜ他人の神経を逆撫でするか分からない。

 主人公は、ガールフレンドを怒らせて振られてしまう。そして、大学の寮のサーバーをハッキングして、女性の顔を比べるフェイスマッシュというサイトを作り、呼び出しを食らう。

 彼はそのことで有名になり、エリートたちから声をかけられる。そして、彼らが企画しているサイトの構築を頼まれる。主人公はそのアイデアを叩き台にして、自分のサイトを勝手に作ってリリースする。

 その勝手な行動には、主人公とエリートの感情的な齟齬があった。

 主人公は、大学のセキュリティの問題を指摘したことを「素晴らしいこと」と考えていた。しかし、エリートたちは、そのことを「汚名」と考え、主人公に「汚名返上の機会を与えてやる」と接近してきてからだ。

 主人公は、エリートたちの再三にわたる停止警告を無視して、サイトの改良と展開を進める。その「事業」のパートナーは、彼のルームメイトである「親友」だった。

 創設間もないフェイスブックのサイトは、親友の出した金でサーバー費用を賄っていた。

 フェイスブックは徐々に他の大学にも拡大していく。そのサイトを見つけた一人の男が彼らに接近してきた。ナプスターの創始者の一人であるショーン・パーカーである。

 彼は主人公を焚きつけ、フェイスブックの投資的価値を押し上げる作戦をねじ込む。それは、地味なビジネス展開を考えていた共同経営者の親友とは真っ向から対立する方針だった。

 主人公は、ショーンの言葉に魅せられ、西海岸に移住する。そして、ショーンはその内部に潜り込み、投資会社との橋渡しとなり活躍する。

 その間、親友はニューヨークで地味な営業周りをしていた。彼は久しぶりに主人公の許にやって来て、組織の変貌振りに驚く。そして、主人公が何の相談もなく、勝手に話を進めていることに激怒する。

 ショーンは、そんな「足枷」となる共同経営者を罠にはめて切る策を用意する。主人公はその話に乗り、痛烈な裏切りで親友を会社から放り出す。

 だが、主人公は、その作戦を、さすがにやり過ぎだと反省する。そして、ショーンに恨みを抱く。ショーンは警察に逮捕されて会社から切り離される。

 主人公は、巨額の富を得る。しかし、彼の周りには誰もいなかった。そして、エリートたちから、元の親友から訴訟を起こされる。

 主人公は、自分が全てを作り上げたと主張して、真っ向から対立する。しかし、最後には和解と口止めのために多額の金を払い、訴訟を取り下げさせることになる。
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