映画「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」のDVDを十一月中旬に見ました。
1984年の映画で、監督・脚本はジョン・セイルズ。主演はジョー・モートン。
とぼけた雰囲気のある映画でした。見た直後は、「悪くはないけど、盛り上がりのない映画」と感じましたが、時間が経つと「あれはあれで味わいのある映画」と感じるようになりました。
● SFの設定を借りた下町物
この映画は、黒人そっくりな宇宙人が、アメリカのニューヨークの下町にやって来て、微妙にひっそりと暮らすという内容です。
この映画には、いわゆるSFX的な表現はほとんどありません。そのため、最初の設定を見ていなければ、単なる普通の映画に見えなくもないです。
こういったやり方は、「アルファビル」(1965)の逆バージョンのやり方だなと思いました。「アルファビル」では、何でもない町並みをスタイリッシュに撮って「未来都市です」と言い張るものでした。
対してこの映画は、何でもない人を「宇宙人です」と言い張り、無理やりSF物にしていました。
● 主人公の面白さ
この主人公がけっこう面白いです。本人が面白いのではなく、本人の立ち位置による、周囲の動きが面白いです。
この主人公(宇宙人)は、言葉がしゃべれません。そのため、周囲の人間は、勝手に話しかけ、勝手に納得して、勝手に主人公の考えを汲み取って反応します。主人公が、そう思っているかどうかはお構いなしに。
この微妙な空気感が、けっこう楽しかったです。
また、主人公が周囲の人間たちに愛情を注ぐ様子も垣間見えました。これは、ニューヨークのスラムが抱える問題を扱っていたりして、「宇宙人」は使っているけど、地に足の付いた内容になっていました。
そして、主人公がいつの間にか、周囲の人間たちに「仲間」として受け入れられていく様子が心地よかったです。
● ハンターの面白さ
ここまでだと、話が特に転がらないのですが、この映画には宇宙人を追う、メン・イン・ブラックのようなハンターが二人出てきます。
この二人がかなり奇怪な人物でおかしかったです。
何と言うか、空気の読めないロボットや爬虫類といった感じです。そして、彼らは行く先々で反感を買います。
この主人公とハンターの対比で話が転がっていました。
● 細かなギミックの面白さ
ほとんど特撮を使わずに宇宙人だという演出をしているのですが、その中でもわずかに特撮的な表現が出てきます。そういった表現の中で面白かったのは「目玉カメラ」です。
主人公は目玉を取り出して、監視点に置きます。その目玉が自律的に動いて、映像を録画します。
これが気持ち悪いのですが記憶に残るものでした。
● 粗筋
以下、粗筋です(大きなネタバレはなし。ラスト直前まで書いています)。
主人公は宇宙人。黒人に似た彼は、地球にやって来て、ニューヨークのスラム街に紛れ込む。
彼は言葉はしゃべれなかったが、不思議な力で機械を直すことができた。そして、電化製品を直す仕事を得る。彼は、スラム街の人々に受け入れられつつ、生活していく。
そんな彼を探す謎の二人組みがいた。彼らは行く先々で情報収集をして、主人公にせまっていく。
そして、追っ手と主人公が接触する。主人公は逃げるが、追っ手は徐々にせまる。そして、もう駄目だと思った瞬間、主人公の周囲に謎の人々が現れた……。