映画「ボディ・ダブル」のDVDを、十一月下旬に見ました。
1984年の作品で、監督はブライアン・デ・パルマ、脚本はロバート・J・アヴレッチとブライアン・デ・パルマ。主演はクレイグ・ワッソンです。
けっこう面白かったのですが、第5回ゴールデンラズベリー賞の最低監督賞を獲ったりもしています。
主人公が、覗き見するへたれ俳優で、終盤はアダルトビデオ展開になるので、酷評されたのかなと思います。いやいや、そこがよいと思うのですが。
● サスペンスでミステリの一作
この映画のジャンルは、サスペンスでミステリです。
後で調べてみると、ブライアン・デ・パルマという人は、熱烈なヒッチコック信者なのですね。そして、「裏窓」や「めまい」をモチーフにして、この作品を作ったと。
そういわれてみると、なるほどと色々と腑に落ちます。事件の発端は、望遠鏡を通した覗きであるというのは、まんまそういった設定です。
途中で気を失うシーンなども、ヒッチコック風のカメラワークに見えます。
こういった部分は、大いにリスペクトして作ったんだろうなと思いました。
● よいお尻映画
この映画の特徴の一つはエロスにあると思います。
主人公は、女性のエロティックなダンスに引き付けられて、望遠鏡での覗きを続けて事件に巻き込まれます。
そして映画の後半は、どんどんエロスの方に傾斜していきます。それは、映画俳優の主人公が、ピンク映画の世界に侵入していくからです。
そうやってエロティックなシーンが、後半になると加速度的に増える本作ですが、お尻の描写が執拗で、ぐっと来ます。
言うならば、お尻映画です。
エロスを表現するにも、監督によってポイントが色々と違います。人によっては胸だったり、脚だったり、あるいは鎖骨や腰骨、内太股だったりします。
この映画はお尻です。
魅力的なお尻に、主人公も観客も引き寄せられます。
私は個人的には、胸映画よりも尻映画の方が上だと思っているので、なかなかよいのではないかと思いました。
本作はミステリの要素を多分に含んでいます。
ネタバレにギリギリ引っ掛かるかもしれない感想を書くので、そういったことが嫌な人は、この先を読まないでください。
● 想像していたのとは違う「ボディ・ダブル」の意味
私は最初、「ボディ・ダブル」という意味を、「body(死体)」に引っ掛けた意味ではないかと思っていました。
しかし、死体は全然関係なかったです。もっと単純なトリックでした。
トリックの内容自体は、ヒッチコック的なシンプルなものでした。ああ、なるほどと思える内容です。
しかし主人公は、お尻鑑定士としてはレベルが低いかもしれないなあと思いました。まあ、私も最初に騙されたわけですが。
というわけで、本作は「ボディ・ダブル」という題名に引っ掛けたトリックがきちんと用意されていました。
● 粗筋
以下、粗筋です(大きなネタバレはなし。終盤の直前まで書いています)。
主人公は、B級映画の主演を務める俳優。そして閉所恐怖症の持ち主だった。
ある日彼は、B級ホラー映画の撮影中、墓場から蘇るシーンでパニックを起こしてしまう。
彼は主役を干されて、失意の内に家に戻る。そうすると、恋人が他の男と同衾しているところに出くわす。彼は家を離れて呆然とする。彼の住んでいた家は恋人の持ち物だった。彼は住む場所を失った。
主人公は、他の映画のオーディションに出る。そこで一人の男に出会う。彼も同じ業界の人間だと言う。そして、主人公に頼みごとをする。
それは、彼が、金持ちの友人から任されている部屋の管理を、一時的に代わってくれというものだ。依頼主は、仕事でハリウッドをしばらく離れなけばならないと言う。
住む場所を失っていた主人公は、二つ返事でその話を受ける。その住居は、丘の上から街を見下ろせる場所にあった。
引継ぎの最中、男は望遠鏡の先を示す。レンズの向こうにある屋敷の部屋では、一人の美しい女が背を向けて裸で踊っていた。
「この時間になると、いつも踊っているんだ」
主人公はその様子に興奮する。彼はその部屋で暮らし始めてから、毎日望遠鏡を覗くようになった。
ある日、いつものようにレンズの向こうを見ていると、女性が男と口論しているところを目撃する。さらに、彼女を付け回す謎の男がいることも知る。
主人公は、好奇心と恋心と彼女を守ろうという心から、女性の尾行を始める。その途中で謎の男に襲われて追いかける。しかしトンネルに逃げ込まれ、閉所恐怖症のため、途中で気を失う。
その後、主人公は、いつものようにレンズを覗いている最中に、女性が襲われる様子を目撃する。彼は必死に駆けつけるが、女性は惨殺された後だった。
最初、主人公は警察に疑いの目を向けられる。しかし殺人犯ではないと結論付けられる。事件は迷宮入りするかに見えた。
その時、主人公は一本のエロビデオを見つける。そして、そこに写っていた映像から、衝撃の事実を知る。彼は、事件の全容を解き明かすために、アダルトビデオの現場に、男優志願として潜り込む……。
● 犬
映画中、犬が出てきます。この犬が襲う相手が「えっ? 違うんじゃないの?」と思う相手です。
でも、映画の終盤、謎が解き明かされてからは「正しい相手を襲っていた」と分かります。
こういったギミックは、面白いなと思いました。