映画「ナイル殺人事件」のDVDを、十二月上旬に見ました。
1978年の作品で、監督はジョン・ギラーミン、原作はアガサ・クリスティ(「ナイルに死す」)、脚本はアンソニー・シェイファー。主演のポアロ役はピーター・ユスティノフ。
エジプトの映像といい、推理劇といい、申し分のない感じ。よくまとまった古典ミステリとして楽しめました。
● 舞台の魅力
この映画の舞台はエジプトです。そして、物語の中心は、ナイルの河下りのクルージングです。
こういった旅行物は、映像だけでも堪能できるものだなと思いました。私が見たのは小さなPCモニタですが、映画館で見れば、かなりの見ごたえだったろうなと思います。
とくにエジプトは、欧米人だけでなく、日本人の目から見てもエキゾチックです。また、巨大建造物と荒廃した自然の対比が印象的なので、よい絵になります。
それだけでも何割か得しているなと思いました。
● 繰り返し描写によるミステリの演出
この映画はミステリです。そして、古典的な探偵による推理劇です。そのため、推理シーンとして、何度も同じ場面が、手を変え、品を変え繰り返されます。
この映画は非常にテンポよく、繰り返しシーンを処理していました。しかし、下手な作りだと、この部分はけっこう苦痛だろうなと思いました。
こういった単純な作りのものほど、力量が問われるのかもしれないと思いました。
● 玉突き衝突的進行
アガサ・クリスティのポアロ物では、少し前に「地中海殺人事件」(1982年)を見ました。この映画は、既に起こった事件をどう解くかという話でした。
対して今回の「ナイル殺人事件」は、現在進行形で事件が進んでいきます。
事件→捜査→捜査の話を受けて、新しい事件。といった感じで、アクションに対して、リアクションで事件が起こっていきます。
後で説明されると「ああ」と思いますが、進行中は、けっこうドキドキしながら「誰が犯人かな」と思いながら見ました。
ただ、「地中海殺人事件」みたいな結末になりそうだったので、そう思いながら見ました。
● 監督と俳優
監督のジョン・ギラーミンは、「タワーリング・インフェルノ」(1974)の人でした。でも、それ以外は、あまり記憶に残っていないです。「ナイル殺人事件」はよかったので、これとセットで覚えるようにします。
主役のピーター・ユスティノフは、ポアロっぽかったです。調べてみたら、この映画以降、ポアロ役でテレビシリーズなどに出ているのですね。なるほどのできばえでした。
また、この映画では、キーとなるキャラクターとして、ミア・ファローが出てきます。彼女は、壊れそうな感じのキャラがよく似合いますね。精神的な壊れやすさが、肉体的な線の細さでよく表現されています。
こういった役は、豊満な女性ではあまり似合わないなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(大まかな流れだけ。ネタバレはなし)。
舞台はエジプト。主人公は名探偵ポアロ。彼はナイルの川下りに参加する。
その船には、ある人物の関係者が乗り込んでいた。
彼女は最近巨額の財産を受け継いでおり、一人の男性と結婚していた。結婚した男性は、彼女の親友の婚約者だったが、彼女が奪っていた。
旅の途中、ことあるごとに、女性の親友が現れ、彼女を悩ませる。また、彼女を狙ったと思われる岩の落下なども発生する。船に乗っている人物は、ポアロとその友人、そして女性の夫以外は、みな女性に恨みを持っていた。
そういった中、女性が殺される。そしてえポアロが推理に乗り出す。だが、そのことで、次の殺人事件が発生していく。ポアロは、断片的な情報から、犯人を推理していく……。