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2011年06月14日 13:38:45
ヒッチャー
 映画「ヒッチャー」のDVDを、二月中旬に見ました。

 1985年の作品で、監督はロバート・ハーモン、脚本はエリック・レッド。主演はC・トーマス・ハウエルで、敵役はルトガー・ハウアー、ヒロインはジェニファー・ジェイソン・リーです。

 凄かった。ルトガー・ハウアーの圧倒的な存在感が圧巻の映画でした。これは興奮で鳥肌が立つ映画です。



● 不条理ギリギリの敵

 この映画の最大の魅力は、ルトガー・ハウアー演じる「ヒッチャー」(ヒッチハイクをする人)です。

 彼は常習的な殺人鬼で、ヒッチハイクをして相手を殺すことを繰り返しています。そして、主人公の車に乗り、自分は殺人鬼であることを告げ、そこから物語は始まります。

 このヒッチャーですが、現実に存在する人物のようでありながら、どこか都市伝説上の人物や幽霊のように非実在の人物のようにも見えます。

 そのギリギリのラインで神出鬼没さながらに主人公の前に立ちはだかり、主人公を追い詰めていきます。

 このヒッチャーの存在感が、ともかく圧巻です。

 殺人を犯しながらも、どこかで自分を殺してくれる好敵手を探しているようにも見える。主人公を追い詰めながら、自分を殺すほどの人間に育つことを期待している。

 心情を吐露しないし、自分のことを何も語らないにもかかわらず、様々なことを想像させ、推測させる人物。

 その恐るべき敵が、無機質なロボットや自然災害のように、主人公を凄まじい勢いで追い詰めていきます。

 方向性としては、スピルバーグの「激突!」(1971)や、ジェームズ・キャメロンの「ターミネーター」(1984)を思い出すような追跡物です。

 しかしそこに、ルトガー・ハウアーの不気味さが加わり、一味違う映画になっていました。



● 主人公の成長

 この映画の面白いところは、敵の存在だけでなく、主人公の成長にもあります。

 主人公は、数多の殺害された人々と同じように、ヒッチャーに襲われます。しかし、機転により一命を取りとめ、そこから死の追跡劇が始まります。

 ギリギリのところで殺されずに生き永らえる。その様は、獲物をいたぶりながら、長く遊ぼうとする肉食獣のようでもあります。

 そして、主人公はじわじわと成長して、精悍な男へと変貌していく。ヒッチャーはそれを喜ぶように、主人公に圧力を掛けていく。

 最後は、互角の存在となった主人公とヒッチャーは正面から対決することになります。

 いやあ、面白かった。

 あと、ヒロインの扱いが酷い(映画としてはよい)です。これだけ酷い扱いを受けるヒロインも、他にはあまりないのではないかと思いました。



● 丁寧な描写

 この映画は、非常に丁寧な描写で話が進んでいきます。それが、どうにも夢物語のようなこの作品の敵の存在に実在感を与えています。

 あと、随所に挟まれる小道具による伏線は、ルドガー・ハウアーのアドリブが大きく影響しているようです。

 DVDの映像特典で、各人のインタビューがあり、それらの演出はルドガー・ハウアーが主導して行ったと話されていました。



● 粗筋

 以下、粗筋です(大枠でのネタバレあり。終盤まで書いています)。

 主人公は若者。彼は代行運転で車をハイウェイの先へと運んでいた。そこで彼は一人のヒッチハイクの男を乗せる。男は自分が殺人鬼であることを告白する。

 主人公は脅され、殺されかけるが、機転を利かせてヒッチャーを車外に放り出すことに成功する。

 だが、悪夢はそこで終わらなかった。ヒッチャーは、次の車で殺人を犯す。主人公は、警察にそのことを告げ、ヒッチャーの暴走を止めようとする。しかし、暴走は止まらない。それどころか、主人公自身が殺人犯だと誤認されてしまう。

 主人公の行く先々にヒッチャーは現れ、殺人を重ねる。そして、主人公はヒッチャーと警察に徐々に追い詰められていく。

 そんな主人公の言葉を信じて、救ってくれる女性も現れる。しかし、主人公の心に安寧は訪れない。ヒッチャーは、彼女も標的にする。

 また、主人公の言葉を信じてくれる警察官も現れる。そしてヒッチャーの逮捕に協力してくれてる。

 だが、警察の拘束など、ヒッチャーには何の意味もなかった。

 主人公は、自分が全ての幕を引くしかないと決意する。そして、法の枠を超えてヒッチャーと対決するために、敵の前に自らの足を運んでいく……。
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