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2011年07月12日 17:00:16
フライトナイト
 映画「フライトナイト」のDVDを三月中旬に見ました。

 1985年の映画で、監督・脚本はトム・ホランドです。

 落ちぶれた役者ピーター・ビンセント(ロディ・マクドウォール )が非常によかったです。

「頑張ったピーター・ビンセント!」という感じで、ピーター・ビンセントのへたれ勇気っぷりがよい映画でした。



● バンパイア物

 この映画は、B級コメディタッチですが、色々な要素がほどよく入っていて、それらがきっちりとツボを押さえていて出来がよいです。

 というわけで、まずはどういった要素が入っているのかを挙げていこうと思います。

・バンパイア物
・隣家観察スリラー
・偽者が本物になる話

 まずは「バンパイア物」についてです。

 この映画は、現代が舞台で、冴えない男子高校生が主人公という、いかにも青春コメディといった設定です。そういった主人公の家の隣りに、吸血鬼らしき人物が引っ越してきます。

 この吸血鬼が、非常に古典的でお約束をきっちりと押さえた吸血鬼です。

 どこらへんがお約束を押さえているかと言うと、ちゃんと従者がいて、吸血により従者を増やします。そして、変身や棺、異性の凝視による催眠といった要素も出てきます。

 これらの要素は、TRPGのルールに書いてそうな古典的な設定を踏襲しています。

 ここらへんが非常にきっちりとしているので、主人公たちが「どう倒すのか」というのを、共感しながら楽しむことができました。



● 隣家観察スリラー

 これもよくあるパターンをきっちりと押さえています。

 隣家に何者かが来て、その相手がやばい相手だけど、周囲の人間は信じてくれない。そして、主人公たちだけで対処しなければならなくなる。

 最近の映画だと、「ディスタービア」(2007年)がこのタイプのものでした。

 少しパターンは違いますが、「裏窓」(1954年)などは、近いタイプの映画だと思います。

 本作や「ディスタービア」のような、こういった種類の映画は、いくつか共通の特徴を持っています。

・主人公(たち)だけが事実を知っていて、他の人は信じてくれない。

・主人公は、現在の場所を離れることができない。

・主人公は、敵を倒さなければ、身近な大切な人を失う。

 このタイプのものに怪奇系はよく適合します。なぜならば、「隣人がバンパイア」といったことは、にわかには信じてもらえませんので。

 というわけで、主人公は必死に「事実を信じてもらう」ために奔走します。そして、それが無理だと悟った暁には、大切な人を守るために「決死の戦い」に挑みます。

 王道ですが、きっちりとそういった話を描ききっていてよかったです。



● 偽者が本物になる話

 この映画の最もよかった点は「偽者が本物になる話」です。

 映画の冒頭で、主人公と彼女は、「フライトナイト」というテレビドラマを見ています。

 これは、バンパイア・ハンターの「ピーター・ビンセント」が登場する番組です。

 映画の途中で、隣家のバンパイアに悩んだ主人公は、このピーター・ビンセントの許を訪問します。本物と思って!

 しかし「ピーター・ビンセント」は、番組の低迷から首を言い渡されてしょげています。

 そして彼は、本当はバンパイア・ハンターではないので、主人公の話を断ります。

 これで終わりと思いきや、その少し後に、主人公のガールフレンドと友人がやって来ます。

 二人に「バンパイアという妄想に取り憑かれている主人公の目を覚まさせるため」と言われて、彼はバンパイア・ハンターの役になり、「吸血鬼ではない」ことを証明するための一芝居を打つことになります。

 そこで彼は、主人公の隣人が「本当の吸血鬼」であることを知ってしまうのです。

 このピーター・ビンセントこそが、この映画の影の主役です。

 最初は怯え、尻尾を巻いて逃げようとするのですが、なけなしの勇気を奮い起こして、最後は主人公と共に吸血鬼に立ち向かいます。

 いい話だ。

 こういった「偽者が本物になる話」は、素直に喝采を送りたくなります。

 それは、ほとんどの人は「本物になれない偽者的存在」だからだと思います。いつか自分たちも「本物」になれる。そういった勇気を、こういった話は教えてくれるのだと思います。



● 粗筋

 以下、粗筋です(中盤を少し過ぎたところまで書いています)。

 主人公は男子高校生。彼にはガールフレンドがいる。

 主人公の隣に新しい住人が引っ越してきた。主人公は、その相手が吸血鬼だと疑いだす。その疑いはどうやら正しいと彼は確信する。

 主人公は隣人を吸血鬼として退治しようとする。周囲の友人は呆れ、大人は信じてくれなかったが、相手は本物の吸血鬼だった。彼は吸血鬼に狙われることになる。

 主人公は、テレビ番組の中のバンパイア・ハンターに助けを求める。だが彼は単なる役者だったために、彼の求めを断る。

 主人公の怯える様子を見たガールフレンドと友人は、彼の目を覚まさせるために役者の許に行く。そして、一芝居打ってもらうことにする。

 主人公とガールフレンドと友人と役者は隣家に行く。そこで役者は、隣人が本物の吸血鬼だと知る。そのことは、吸血鬼にも気取られる。

 そして、吸血鬼とその従者は、秘密を守るために、主人公たちを亡き者にしようと動き出す。
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