映画「勇気ある追跡」のDVDを九月中旬に見ました。
1969年の映画で、原題は「True Grit」。監督はヘンリー・ハサウェイ、脚本はマーガリット・ロバーツ、主演はジョン・ウェインとキム・ダービーです。
gritには、「気概,気骨,不屈の精神,勇気,元気,肝っ玉」という意味があります。「a man of true grit」の成句で「真の勇者」を指すようです。gritの本来の意味は「砂、砂塵」のようです。動詞では「(歯などを)ギシギシいわせる,きしらせる」という意味になるようです。
復讐物の映画なのですが、やけに陽性で痛快な映画でした。面白かったです。
● キャラ立ちの映画
この映画は、ストーリーというよりは、キャラに重点が置かれた映画だと思います。
ともかく、主人公の女の子と、その女の子に雇われる保安官がキャラ立ちしています。この二人の魅力で映画がぐんぐん進んでいきます。
そしてこの二人の掛け合いがともかく楽しいです。
というわけで、どんな二人かを書きます。
● 主人公の女の子
十代前半の女の子なのですが、農場の金庫番を任されており、金に煩く、一度言い出したことは貫徹する性格で、笑顔というよりは、睨む感じで迫ってくる少女です。
美人ではないですし、可愛くもないのですが、妙に味があってキャラが立っています。
父親が殺されたので復讐をすると決めて、凄腕の保安官を雇い、自分も雇い主として付いていきます。
まだ子供だけど、微妙に有能でへこたれません。
これ、マンガにしたら、絶対萌えキャラだよなと思いました。
● 凄腕の保安官
大柄で隻眼で、飲んだくれで、大らかで、凄腕で、無頼漢の老保安官です。
女の子がギスギス系なら、こっちは超適当系、でも超優秀。この対比が非常によいです。
しかし映画では、ここにもう一人のキャラを投入してきます。
● 若いテキサス・レンジャー
老保安官に対する若手というだけでなく、女の子の父親の仇を、別件で追っています。
老保安官とは、老・若という対立軸だけでなく、犯人を追う者として共同戦線を張るという仲間意識も持っています。
逆に女の子とは、犯人をどの罪で(どの州で)裁くかで、取り合いになります。
こういった感じで、微妙に対立もあったりするのですが、そこは陽性で和やかです。
「お〜、あいつもけっこうやるな」という感じのスタンスです。
この三人の仲間の微妙な距離感と協力関係が良かったです。
● ネッド・ペッパー(ロバート・デュヴァル)
犯人が逃げ込んだ一団のボスです。
これが影があって、渋くてよいです。単に悪い奴というレベルを超えた、何か持ってそうな奴という佇まいを見せています。
この人は、後に「テンダー・マーシー」(1982年)でアカデミー主演賞を取っています。
というわけで、映画自体は、割とシンプルな追跡劇なのですが、ともかくキャラが立っていてよかったです。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。ラスト直前まで書いています)。
主人公は牧場の少女。彼女の父親が殺される。彼女は父親の仇を取るために、金を工面して、凄腕の老保安官を雇う。
犯人は、別の州で別の犯罪も犯していた。その犯罪を追ってきた若手テキサス・レンジャーも、犯人を追う。
主人公と老保安官とレンジャーによる、奇妙な三人パーティーは、犯人を追跡する。
最初の内は、少女が足手まといだということで追い払おうとしていた老保安官とレンジャーも、いつしか彼女を仲間として扱うようになる。
そして、犯人の許にたどり着く。犯人は犯罪集団に身を寄せていて、少女は捕まってしまう。そこから一対多の決闘に導き、老保安官は馬上射撃で敵をなぎ倒していく……。
以下、ネタバレありの感想です。
● ラスト
ラストが非常に可愛いです。
老保安官に真の男のガッツを見せられた女の子は、ちょっと保安官に惚れてしまいます。
そして、「あなたは独り身で、天涯孤独で、死んだら入る墓がないんだから、私の家の墓に入るようにしなさいよ!」と、ぷりぷり怒りながら勇気を出して告白します。
「うわっ、いいツンデレだ!」と思いました。
「えー、それどんなプロポーズですか?」状態です。
老保安官の方は、女の子があまりにも子供過ぎるので、頭ぽんぽんして「ガハハ」と笑い飛ばし、申し出を受けずに「ヒャッホー!」と馬を飛ばして去っていきます。
恥ずかしいけど、心温まる、いいラストだなと思いました。