映画「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」のDVDを九月下旬に見ました。
2005年の作品で、監督はアレックス・ギブニーです。
エンロン崩壊の真相に迫るドキュメンタリーで、企業・メディア・銀行ぐるみの壮大な詐欺の模様がこれでもかと描かれています。非常によかったです。
● エンロンという会社
この映画を見るまでは知らなかったのですが、業務のメインはエネルギーの先物取引だったようです。
他にも色々とやっていたようですが、メインはそこで、ブッシュなんかとも仲がよかったと。
なるほどという感じでした。
● 時価主義会計と企業・メディア・銀行ぐるみの詐欺
それで、このエンロンという会社のどこがやばかったかというと、元々の詐欺的体質も紹介されているのですが、その最大のものは「時価主義会計」という会計方式です。
将来的に上がるであろう売り上げを想定して、現在まだ上がっていない売り上げを帳簿に計上するという方式です。
これは恣意的な要素が強く、言ってみれば「どうとでも言える」というものです。
この方式で売り上げを最大限に誇張して株価を吊り上げる。そういった手法でどんどん会社の規模を大きくしていきました。
さらに、ここで儲けた金で株のアナリストに絶賛させ、さらに銀行の担当者にも金を回させ、どんどん架空の経済規模を作っていきます。
これは完全に詐欺師の軍団だなあという感じでした。
● カリフォルニア電力危機
映画の中盤ぐらいから出てくる話です。
カリフォルニアの電力会社を買い取り、その先物取引を始めます。そして、価格を吊り上げるために、ガンガン停電を起こします。
おかげでカリフォルニアの経済や市民生活は大混乱。相当ひどいことになります。
今、TPPで公共事業の自由化をアメリカが迫っていますが、これがアメリカの本質なので、絶対受けちゃ駄目です。
TPPは、農業の問題ではなく、公共事業や医療や金融や保険といった、国のありようや自治に直結する問題です。自治権の放棄を迫るような内容です。
そもそも、市民生活にクリティカルに関わる物は、自由競争はまずいです。大幅な規制を入れ、自由に商売などできないようにして縛らないといけないです。
そういったことがよく分かる映画だと思いました。
● エネルギー企業の精神 東電
この映画を見ていて腹が立ったのは、その会社の精神的な部分が、311以降で露呈した東電とそっくりなところです。
金で都合のよい情報だけ流して、破壊的な詐欺を働くところとか、自分たちの利益のために電気代を吊り上げたりするところとか、全く同じです。
方向性は違えども、似たような精神の企業だというのが素直な感想です。
そして中で働いている人の悪事をしていることに対する罪の意識のなさも同じです。悪も、ずっとその中にいると、自分が悪だと思いも寄らなくなる。東電なんかは、まさにそういった企業体質です。
おかげで、見ている間中、東電に対して怒りが湧き続けました。
● 粗筋
以下、粗筋です(特にネタバレとか関係のない映画なので、そのまま書きます)。
アメリカでも屈指の大企業エンロンが倒産した。その原因はいったい何だったのか?
エンロンはエネルギーの会社としてスタートした。そしてエネルギーの先物取引を行うことで大きな企業になった。
そこには、時価主義会計という、架空の売り上げを計上して、株価を吊り上げるという詐欺的手法が使われていた。
また、市場アナリストたちを騙したり金で黙らせたりして、エンロンの素晴らしさを吹聴させることで、その株価の上昇を維持し続けた。
エンロンは、株価を吊り上げ続けることで存続した。しかし、バブルは弾ける。その瞬間は刻々と迫っていた。
そして、社長が辞任し、会長が社長に繰り下がり、破綻の瞬間が来て、株価が全て紙くずとなる。
関係者は裁判にかけられ、罪の捌きを待つ。