映画「サブウェイ・パニック」のDVDを九月下旬に見ました。
1974年の作品で、監督はジョセフ・サージェント、原作はジョン・ゴーディ、脚本はピーター・ストーン。出演はウォルター・マッソー、ロバート・ショウ他。
パニックと付いていますが、パニック映画ではありません。犯罪映画です。非常にスタイリッシュな映画で面白かったです。
● 手に汗握る地下鉄ジャック
普通、乗り物ジャックといえば、飛行機とか船とかそういったものです。この映画は、もっと身近な地下鉄が舞台です。
そして他の乗り物との大きな違いは、地下鉄自体が地下にあるので、閉鎖空間に存在している点です。
こうなると、移動による景色の違いや状況の変化はほぼ見込めません。なので、映画の題材としては非常に不利です。
もっと言うと、犯人側は個人を特定させないために、全員がほとんど同じ服装をしています。
これも、犯罪的には正しいけど、映画としては不利です。
でも、この映画はその悪条件の中で成功しています。
これは、犯罪者側ではなく、捜査側に変化を付けているからだと思います。
管制室や駅、地上など、いくつかの舞台を出すことで、変化を与えています。
また、捜査側が推理して、その上を犯人側が行き続ける構成になっています。そのことで、犯罪者側は解答を出す役割に特化しています。
こういった役割分担を明確にしていることも、この映画の成功の要因ではないかと思いました。
● スタイリッシュな犯罪者
犯人がイケています。
全員が同じ服装、同じ髭に、同じ帽子を被ることで、個人を特定しにくいように変装しています。
さらに、全員が色名で呼び合うことで、名前も抽象化しています。
このやり方は、後にタランティーノの「レザボアドッグス」(1991年)に影響を与えているのだと思います。
クールで非常によかったです。
● 日本人
映画の前半、地下鉄の管制室を紹介するために、日本の地下鉄会社からの視察団というのが出てきます。
「ああ、アメリカ人が考える日本人だ」と思いました。意味もなく写真を撮っているし。
でも、実は英語を全部理解していたというオチがあったりと、面白く使っていました。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
地下鉄がジャックされた。占領したのは、全員同じ姿をした一団だった。
警察は、彼らと交渉して、何とか事件を解決しようとすう。しかし、犯人は一枚も二枚も上手で、妥協を許さず、警察への指示を実行に移し続ける。
そして、金を手に入れた強盗団は脱出を図る。
あまりにも周到に用意されていた計画は、元地下鉄職員が実行犯にいるからだった。
逃走の段階で、1人を残して全員が死んだ。
警察は、元職員で解雇された人間を調査していく。そして最後の犯人に行き当たる。
以下、ネタバレありの感想です。
● オチのクールさ
ミスター・ブルーの散り際が非常に格好よいです。自分が負けたと分かり、線路の電気で感電死を選びます。
そしてラストの唯一残った犯人の正体がばれるシーンも秀逸でした。
最後の最後まで、よくできた映画でした。