映画「ブルーバレンタイン」を2012年4月に見ました。
2010年の作品で、監督はデレク・シアンフランス。主演はライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズです。
● 鋭い針ほど、刺さる人が少ない
ある夫婦の、別れと出会いを同時進行で描き、その切なさを表現した佳作です。映画評論家の町山智浩さんが、自分と重ね合わせてやたら絶賛していたので見ました。
主人公の男性は、夢見がちな芸術系男性です。彼の妻はキャリアを積み重ねようとする人間で、彼女との心の溝ができていきます。
すれ違いの様子が分かる細かな描写が多く、台詞で語らなくても、その齟齬がはた目から浮かび上がって来ます。そのたびに「ああ……」とため息が漏れます。そういったところが、非常に上手い映画でした。
そういった設定と描写が、「離婚の危機を迎えたことがある」という、町山さんの心に刺さったのだろうと思います。
ただ、私には刺さらなかったです。
こういった、より狭い感情に訴えるタイプの映画は、刺さる人には、心の奥底をえぐるように深く刺さるのでしょうが、そこから外れた人には、それほど刺さらないものです。
なので、まあ仕方がないのだろうと思いました。こういった経験をした後ならば、共感できる映画だと思いますが。
● ラブホテル
この映画は、別れに至る過程と、交際に至る過程を同時に描きます。
この「離婚の危機」の側は、夫が妻をラブホテルに誘い、そこに行き、二人で過ごすという部分に、比較的長い時間が割かれます。
なんというか、夫側が必死に妻を繋ぎとめようとする様子と、彼のいらだちとが痛いほど伝わってきて、けっこう辛いです。
切ないを通り越して辛い。
人間って、なかなか上手くいかないものだなあと思いました。
● あらすじ
以下、あらすじです。最後まで書いています。ネタバレあり。
主人公は芸術を愛する男。その妻はキャリア志向で、医療系で資格を取り、よりよい仕事をしたいと望んでいる。
出会った頃は互いに愛し合っていた2人だが、その心はすれ違い、別れの危機を迎えようとしている。
主人公には、なぜ妻がそこまであくせくしているのか分からない。妻は、夫がずっと同じ場所に居続けることに、いらだちを覚えている。
ある日主人公は、2人の間の溝を埋めるために、妻をラブホテルに誘う。忙しいからと拒絶していた妻だが、しぶしぶ彼に従い、車に乗る。
主人公は、出会いの頃を思い出しながら、必死に溝を埋めようとする。2人はラブホテルに行き、朝を迎える。しかし、仕事に忙しい妻は、寝ている夫を置いて職場に行く。
主人公は妻の職場に行き、暴れる。
2人の仲は決裂する。恋で始まった愛は冷め、2人の人生は再び分かれていく。