2018年7月17日に、いつもの太郎さんと一緒に、新日鐵住金の君津製鐵所に行ってきました。
普通なら「新日鉄住金の君津製鉄所」と書きそうなものですが、古い字の「鐵」の方が正式な名称のようです。
これは、鉄が「金を失う」なので、それを嫌って旧字を使っているそうです。見学の時に案内してくれたお姉さんが、そう話していました。
鉄を扱う会社では、「金に矢」としている所もあるようです。金は失いたくないですね。
工場見学のご案内 | 君津製鉄所 | 製鉄所 | 新日鉄住金
新日鐵住金の君津製鐵所ですが、千葉の君津にあります。そして、私が住んでいる場所は横浜です。今回は、埼玉に住んでいる太郎さんが車を出してくれて、東京湾アクアラインを使って千葉まで行きました。
横浜から君津への移動ですが、幸いなことに道路が空いていたので、早めの時間に着きました。
敷地は呆れるほど巨大な場所でした。あとで聞いた話では、東京ドーム220個分で、所内に走っている鉄道の延長は山手線2周近くということでした。
敷地面積の正確な数字を書くと、1228万平方メートル。これは12.28平方キロメートルです。
東京都渋谷区は15.11平方キロメートル、東京都中央区は10.21平方キロメートルです。その面積が埋め立て地になっていて、1つの会社の製鉄所になっているわけです。
どれだけ巨大なのかがよく分かります。車で端から端まで行くのに15分と言っていたので、その大きさがよく分かります。
余談として、私の地元の北九州にある八幡製鉄所は1595万平方メートル(15.95平方キロメートル)になります。君津製鉄所より、ちょっと広いです。
(展示スペースの航空写真より引用)
さて、製鉄所に着いて、本館に入り、先方に着いたことを伝えました。そうしたら、本日の午前中の回の見学者は、私と太郎さんの2名のみということでした。
「年間で3万人が見学に来る」ということでしたので、珍しく人が少ない日に当たったようです。
ちなみに普段は、小学校の社会科見学が多いそうです。5~6年生で、車の製造について習う前後で来るのが定番ということでした。
また、夏休みに入ると親子連れが増えます。その際、1番興奮しているのは、お父さんということでした。
製鉄所で働いている人は、関連会社なども含めて1万8000人だそうです(工場は3交代制)。その多くは、工場内やその周辺に住んでいるそうです。地元採用も多く、案内してくれた広報のお姉さんも、地元採用ということでした。
人数といい、小学校の社会科見学といい、地元密着なのだろうなと感じました。
さて、予定より30分ほど早く着いたのですが、他に見学者がいないという理由で、15分繰り上げてスタートしてくれました。
とはいえ5~10分ぐらいは待ち時間があり、その間に本館にある「展示スペース」(鉄に関するミニ博物館的な展示)を見て時間を潰しました。本館は新しくてきれいでした。
待ち時間の途中でトイレに行って感心したのは、男性用トイレに「おむつ交換台」があったことです。親子連れの見学が多いことと、関係しているのだと思います。
見学のスケジュールは、他の社会科見学と大体同じです。最初に簡単な説明を受け、ビデオを見て、実際の見学です。
特徴的だったのは、各種資料とともに、ヘルメットと軍手と無線のイヤホンが置いてあったことです。
見学の案内には、「長袖長ズボン着用、草履禁止」と書いてあったので、靴に長ズボンの格好で、長袖を鞄に入れて行きました。
「長袖は着なくてもいいですよ」とのことだったので、半袖姿で見学。しかし、ヘルメットと軍手は着用しました。
無線のイヤホンは、製鉄所の音が大きいので、案内が聞こえないためです。実際に、厚板工場(あついたこうじょう)に行った際は、音が大きくてイヤホンなしで会話を聞くのは難しかったです。
見学コースは日によって微妙に違い、私たちの時は、「プラスチックリサイクル工場」「第四高炉」「厚板工場」という順番に、車で移動しながら見学しました。
第四高炉以外は撮影禁止でしたので、写真少なめの見学です。
説明、ビデオ、見学を含めて、全部で2時間のコースでした。
製鉄所の立地は、海沿いの埋め立て地です。鉄鉱石の搬入や、製品の搬出などで船を使うので、自然と海沿いになるそうです。
その埋め立て地を車で移動します。普通の街みたいに、車道があり、標識があり、信号もあります。
周囲は様々な工場とともに、パイプラインや鉄道が走っています。線路の幅は、新幹線と同じ広軌(こうき)だそうです。大量に物を運ぶからなのかなと思います。客車ではない無骨な列車が、無数に走っていました。
途中で見た列車の運転手は、リモコンで列車を動かしていました。
そうした景色の合間を縫いながら、最初にたどり着いたのは、プラスチックリサイクル工場でした。ここでは、プラスチックを石炭とともに高温にして、再生可能な油を得ます。
また、石炭を熱して揮発物を取り除くことで、コークスも得ます。
リサイクルのためのプラスチックには、不要物が混ざっています。磁石で金属を除去し、磁気をかけてアルミを取り除き、ふるいでより分け、プラスチックのみを取り出します。
人間の手でのより分けは、最近は分別がきちんとできているので、ほとんどないとのことでした。
こうしてプラスチックから不要物を除去して、切手大に破砕して、造粒物(2~3cmのウインナーソーセージ状の塊)を作ります。
「においがけっこうしますよ」とのことでしたが、造粒物はあまり、におわわなかったです。
この工場では、「製鉄所内は、スチール缶しかないんですよ」と説明されました。アルミ缶はないそうです。そして、スチール缶は回収されて再利用されるそうです。
面白かったのは「鉄魂」というドリンクが売られていたことです。
当然購入して飲んでみました。鉄分配合で、マカとガラナが入っていました。強壮ドリンクという感じした。
オリジナルと言っていましたが、チェリオから販売されていて、通販でも購入可能です。
鉄魂 | CHEERIO
次は、第四高炉です。これがメインの見学対象です。高さ125メートルある、銑鉄(せんてつ)を作る炉です。
この高炉ですが、やたらでかいです。すごいのは、その下に鉄道の駅のような入り口がたくさんあり、生成物を列車に乗せて、次の工場に運ぶ仕組みになっていることです。
列車は2種類あります。まずは「トーピードカー」。これは、1500度でドロドロに溶けた銑鉄を積み込んで、転炉へと運びます。
トーピードカーのトーピード(torpedo)は魚雷という意味です。ラグビーボールにも似た形で、鉄製の枠組みで、中に耐火レンガが入っており、上部から鉄を注ぎ込みます。そして、熱い状態のまま運び、回転させて入り口を横にして、液体状の鉄を次の場所に搬出するそうです。
鉄を満載したトーピードカーは600トンぐらいになると言っていたので、すごい重量です。
次は「スラグカー」。こちらは、不純物を運びます。
そうした列車が、『銀河鉄道999』の駅のような場所から、どんどん出てきます。遠目に、トーピードカーに注ぎこまれる赤い鉄も見えます。
そして、本体の第四高炉。その巨大さは、笑いが込み上げるほど、凄かったです。
写真に撮るとスケール感が薄れるのですが、現場に行くと空気の影響もあって、やたら壮大でラスボス感溢れる場所でした。
巨大構造物・煙突・パイプ・煙・鉄道・金属・錆ということで、男子垂涎の景色です。
1番最初に頭に浮かんだのは、『ファイナルファンタジー』の魔晄炉でした。
また、この外観見学の場所では、鉄鉱石やコークスなどを実際に触れるようになっていました。鉄は重かったですが、コークスは軽石みたいで軽かったです。
最後に見たのは、厚板工場です。分厚い板を、注文に応じて圧延して納品できるようにする工場です。
ローラーの上を、20トン、1200度の厚板が流れてきて、そこに水を吹きつけながら圧延機で引き延ばします。最初の状態では、厚さ30cm、10×10メートルぐらいの巨大な赤い塊です。
厚板工場の全長は1.6キロメートル。延々とローラーと圧延機が続いています。一度の圧延で指定の厚みにはできないので、何度もローラーによる移動と圧延が繰り返されます。
この工場の機械はコンピューター制御です。ローラーで移動するだけでなく、逆回転で90度向きを変え、プレス機で幅を整えるといった、繊細な動きもします。
このローラーは近くに整備工場があり、毎日取り替えているそうです。そして1ヶ月に一度ぐらい、工場を止めてオーバーホールをするそうです。
君津の工場では1日1回のローラー交換ですが、場所によっては1日3回の場所もあると説明を受けました。
見学は、この圧延工程を、キャットウォークを歩いて見下ろします。熱せられた巨大な鉄の塊が来るたびに、周囲の温度が一気に上がります。
「外に比べて10~20度ぐらい上がりますから」という話でしたが、納得の高温です。
そして、下を見ると、ローラーのけっこう近くに人がいて、うろうろしています。
そのことを話題にすると、「実は、下はそんなに熱くないんですよ」と解説がありました。熱は上に逃げるので、下は外気とさほど変わらないということでした。
製鉄所では水も大量に使うそうで、1日あたり230万トン使うと話していました。
また製鉄所は、ともかく火を大量に使う場所です。その廃熱を使って発電も行っています。この電気は工場内で使われるだけでなく、東京電力と提携して、千葉の南側半分程度の電力に使われているとのことでした。
今回の圧巻は、第四高炉でした。あのラスボス感溢れる外観は、一度見て損はないと思いました。
また、「8月の第一土曜日は、予約なしで見学できますよ!」と、広報のお姉さんが言っていましたので、ここに書いておきます。