2005年12月20日 23:27:57
映画「キャリー」のDVD11月中旬に見ました。
ホラー映画の名作で、ホラー関係の本では必ずと言っていいほど名前が出て来る映画です。なので、「見ておかないといけない」と思っていたのですが、長らく未見でした。
やはりよく出来ていますね。見てよかったです。
しかし1976年の作ですか。私が1歳の頃の作品ですよ。
以下、粗筋です。(少しネタばれ気味です)
高校に通うキャリーは内気で、ドジで、いじめられっ子な女の子。
ある日、体育の授業のあと、シャワーを浴びていたキャリーは初めての生理を迎えて血を流す。
母親から生理について何も聞かされていなかった彼女はパニックになり、周囲のクラスメイトに助けを求める。しかし、級友たちは彼女をからかい、キャリーは体育教師に助け出されるまで怯え続けた。
キャリーは体の変化とともに、自分の能力に気付き始める。念動力だ。精神を集中することで、物を動かすことができる力を彼女は持っていた。
家に帰ったキャリーは母親に虐待される。彼女の母は狂信的なキリスト教信者で、女性は不浄なものとして忌み嫌っている。母親の歪んだ精神が、キャリーの心を内向的にし、彼女がいじめられる原因を作っていた。
数日後、キャリーのクラスメイト達は、彼女をいじめた罪で、体育教師から1週間の放課後トレーニングの罰を与えられる。
クラスのなかでリーダー的存在だったクリスは体育教師に反発し、キャリーへの報復を計画する。
また、スーという少女は、自分の恋人に、キャリーをプロム(卒業パーティー)に誘うように依頼する。そのことによって、内気なキャリーが変われるのではないかと考えたからだ。
時は経ち、プロムの当日になる。
キャリーの母親は、娘が笑い者になるに違いないと主張し、パーティーに行くことに反対する。しかしキャリーは念動力を使って反抗し、プロムへと行く。
彼女はプロムで最高に幸せな瞬間を味わう。しかしその直後、クリスによる報復でキャリーはどん底に落ちる。
怒り狂ったキャリーは、その持てる力を全て解放し、周囲を破壊の渦に巻き込んでいく。
(以下、ネタばれありまくりです)
非常によく出来ていました。
自閉気味のキャリーが、徐々に周囲に向けて心を開き始め、母親から自立していき、幸せの階段を上っていくその裏で、彼女をどん底に陥れるための準備が淡々と進んでいく。
キャリーの内面の上昇と運命の下降が、彼女の気付かないところで進行していく様が、うまく描かれていました。
そして彼女は、幸せの絶頂から一瞬にして凋落して、奈落の底に落ちます。続いて始まる暴走と、最後に待つ母との対決。
話の展開は読めるけど、それを圧巻の演技と骨太の展開で描ききったという感じでした。名作に数えられるわけが分かりました。
以下、個人的感想です。
まずはシーンについての感想です。
「冒頭の女子更衣室での、裸の女の子たちのスローモーションのシーン」はびっくりしました。トップレスとかでなく、下の毛まで見える完全なすっぽんぽん。そこから主人公のキャリーの全裸、そしていきなりの初潮。
小池一夫もびっくりの、インパクトのあるシーンでした。一気に映画のなかに引きずりこまれました。
あと、劇中特に印象的だったのは、以下の4箇所。
お仕置き室とでも言うべき、狭く暗い“物置部屋”に置かれている聖セバスチャンの像。これが怖い。狂信的な恐ろしい顔をしていて、不吉の象徴にしか見えないようにして撮っている。
宗教にのめり込んだ者の醜悪さをこれでもかと体現している。そして、あとの伏線に繋がるような造形をしている。うまいなと思いました。
次は、「プロムで、キャリーがトミーと踊るシーン」。2人が回転しながら、カメラは逆回転をして撮影していく。そして徐々にそのスピードを上げていく。
キャリーの高揚感がビジュアル的に表現されているよいシーンでした。
そして、「ラスト近くで、家が燃えて崩れるシーン」。この家の崩壊の仕方がよいです。
これは1/2の模型を燃やして撮影したそうです。当初の予定では、念動力で石の雨が降って崩れる予定だったそうですが、撮影してみると単なる雨にしか見えなかったために、急遽燃やすことになったそうです。
この家が、“内側に崩れていく”のです。自閉気味だった、キャリーがとうとう内部崩壊していくように見えて、よい映像が撮れてスタッフ達は喜んだのだろうなと思いました。
そして、映画が終わるラストシーン。
その直前まで「うまく出来ているな」とは思いながらも、それほどの驚きを覚えずに淡々と見ていました。しかしラストの瞬間、驚かされ、ゾクッとさせられました。
最後まで気が抜けない映画です。最後の最後で「やられた」と思わされました。
よいシーンはこれだけでなく、たくさんありました。
以下、俳優についてです。
キャリー役のシシー・スペイセクの演技が冴えまくり。特に、絶頂から落ちた瞬間の表情は秀逸です。
また、キャリーを圧倒する母親役のパイパー・ローリーの存在感。この二人の対峙シーンは、緊張感溢れるものでした。
あと、「やたらジョン・トラボルタに似ている若い男がいるな」と思ったら、本人でした。
よくよく考えると、30年近く前の映画だから若いはずです。でも、ジョン・トラボルタは30年も経っているようには見えないなと思いました。
あと、原作のスティーヴン・キングについてです。
キングっぽい話だなと思っていたら、やっぱりキングだったのですが、スティーヴン・キングって、綴りはStephen Kingなのですね。
普段片仮名でしか見ていないので知りませんでした。
それと、「この映画のストーリーは、原作とはだいぶ違うんだろうな」と思いました。インタビューの話を聞いていると、物凄い変更が加えられているようでしたので。
DVDには特典映像として、非常に長いインタビューが収録されていました。
これが非常に面白かったです。
何が面白かったかというと「オーディションの話」。
このキャリーという映画は、「スター・ウォーズ」と合同オーディションだったそうです。そして、ジョージ・ルーカス監督と、ブライアン・デ・パルマ監督が、一緒に役者を見ていた。
ジョージ・ルーカスは始終質問しまくりで、ブライアン・デ・パルマはずっと黙っていて、対照的だったそうです。
伝説に残りかねない凄いオーディションだったのだなと思いました。
出演している役者は当時若手だった人たちが多く、その人たちもそのオーディションのことを熱く語っていました。
プロムにキャリーを誘うトミー役の人が「僕はルークになれなかったんだ。その代わりにトミーになったんだけどね」と発言したり、ほかの人が「まるでデ・パルマ監督は、ルーカス監督のおこぼれを拾うようにオーディション会場にいた」などなど。
「おいおい、いいのか?」と思うような言葉が、ぽろぽろと飛び出していました。
インタビューでは、製作秘話的な内容も多く、かなりぶっちゃけた発言が多かったです。
「予算が足りなくて、町を破壊するのは不可能だったから、体育館にしたんだ」とか、「分割シーンは失敗だったよね。だから編集の段階で思いっきり減らしたんだ」などなど。
25年前(インタビューの時点では25年前)の話なので、みんな忌憚のない意見を言っていました。
インタビューは、全部合わせると1時間近くあったと思います。こちらも非常に楽しめました。