映画「ドッグヴィル」のDVDを九月下旬に見ました。
三時間近くある映画なのですが、「なんですかこの前衛ムービーは?」と思いました。
面白い試みだとは思いますが、この画面の作りで三時間はちょっと辛いです。90分ぐらいが最適です。
内容はそれなりに面白いのですが、この前衛さにはちょっと付いていけませんでした。
さて、この映画がどのように前衛的かと言うと、普通の映画に当然ある、ある要素がありません。
それは「背景」。
映画は“電気を消した巨大な体育館”のような暗い空間で撮られており、その床に「ドッグヴィル」という村の簡単な地図が白線で描かれています。
セットはこれだけです。(若干、家具はある)
このセット(というか略地図)の上で、パントマイムのように、扉を開けたり、閉めたりして、外に出たり、家に入ったりします。
壁はないので、当然のように、隣の家の様子は全部見えます。でも、役者は見えていない振りをして、演技を行ないます。
(以下、ネタバレありの文章)
そんな舞台なので、シュールなシーンがときどき登場します。
例えば、ある家で主人公がレイプをされている場面。このとき、周りの家の人たちは、それが見えているのに普通に生活しています。
これは、衆人監視の露出プレイとはまた違った卑猥な雰囲気で興奮させられます。
また、主人公が村の男性の性奴隷にされているシーンでも、女子供問わず、全村人から丸見えです。
エロいなあと思いました。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤まで書いています)
アメリカの辺鄙な村ドッグヴィル。わずか数軒しか家のないこの村に、一人の若く美しい女性がやって来た。
彼女はギャングのボスから身を隠そうとしている。
小説家の青年は、彼女を村で匿うことを提案する。だが村人たちは、厄介事に関わることになるため乗り気でない。
そこで彼は、二週間という期限を区切り、彼女が村人のために雑事を行ない、村の人々の好意を勝ち取ることを提案する。
彼女はその二週間を無事に過ごし、村に留まることを許される。だが、彼女は村人の一員ではなく、あくまで村の客としてしか見られなかった。
それからしばらく経ち、村に警官がやって来る。
警官は、尋ね人の情報募集の張り紙を貼っていく。それは村に来た女性についてのものだった。
最初の時点で、彼女がギャングのボスから逃げてきたことを知っていた村人たちは、なんとなく胡散臭い目で彼女を見始める。
それからさらにしばらくして、警察がまた来る。今度は犯罪に関係した容疑者の一人として彼女の写真を貼っていく。
それから徐々に村人たちの彼女に対する態度は豹変していく。
彼女を脅迫してレイプする者、村の結束を乱す者として非難する者。
彼女はとうとう村から逃げ出そうとする。だが、村人たちの策略でその試みは失敗してしまう。
彼女は、鉄の首輪をはめられて、村の奴隷として飼われることになる。昼は労働を強いられ、夜は男たちの性の捌け口として。
そしてとうとう、彼女の存在はギャングのボスに通報される。村人たちは、情報提供の報酬として金を貰えるものと思い、期待して待つ。
多くの部下を連れて村にやってきたギャングのボスは、彼女を自分の車に乗せ、意外な話をし始める……。
後半はなんというか、エロマンガのような展開です。村に監禁されて、じいさんどもに犯されまくります。
それも、密室ではなく、地図しか書いていない村のなかで。
監督は変態さんだなと思いました。
最後のドンデン返し(?)は、映画の冒頭の展開で予想した通りでした。「やっぱり最後は、ああ終わらないとな」と期待した通りの展開でした。
監督は、鬼畜話が好きなのでしょうか?
人間の嫌らしさが非常によく出ている映画でした。
相手が抵抗できないとなると、どんどん醜悪になっていく人間の精神。そして集団で暴力がふるえるとなると、結束して相手をなぶり殺し状態にしていく人間の本性。
そういう部分がよく描けていました。
しかし、最初にも書きましたが、いかんせん時間が長いのと、背景がないのでかなりきつかったです。