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2007年04月12日 12:56:25
ナイロビの蜂
 映画「ナイロビの蜂」のDVDを三月上旬に見ました。

 2005年のイギリス映画で、「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス監督の作品です。

 よくできた映画でした。

 ストーリーも硬派だし、映像もきれいだし、エロ要素もあるし、最後のドンデン返しも上手い。

 でもなぜか、ぐっと来ませんでした。閾値を越えない感じ。なんでだろう? 「シティ・オブ・ゴッド」は閾値を越えたのですが。

 自分なりに、その理由を考えてみました。



 まず、主人公二人に感情移入がしにくいというのが大きな理由だと思います。

 主人公の男性はイギリスの外交官。そしてヒロインはその妻です。

 この外交官なのですが、ストーリーの序盤、ひたすら受身です。端的に言うと引っ込み思案。

 その彼が、妻の死を契機に陰謀を嗅ぎ付け、ひたすら追っていきます。しかし、主人公の押しが弱いせいで、「周囲との摩擦で発生する熱」のようなものを感じることができません。

 つまり、盛り上がりません。

 低空飛行をしているような気持ちになります。

 そのまま最後まで、離陸感を感じないまま、ラストに向かいます。



 また、ヒロインについても共感ができません。

 彼女は正義感が強く、国策を否定しているくせに、外交官の妻になり、外交官の旦那の仕事の邪魔をして、旦那の立場を追い込んでいきます。

 人の仕事に首を突っ込み、描き回して、妨害する。

 これは、単なる悪妻です。

「二人は愛しあっている」ということで片付けられていますが、はっきり言って問題が多過ぎる女性です。

 愛云々以前の問題です。

 現状認識をせず、突っ走って自爆するという状態から見ても、周りが見えていない人です。

 一人で自爆するのならば別に構わないのですが、“愛している”夫を巻き込んで自爆するのはどうにかして欲しいなと思いました。



 ただ、ラストの観客の裏切り方は上手いなと思いました。

「人がいいな」とは思いましたが、それまでの主人公と周囲の人間関係の描き方から、納得のいく結末でした。

 ただ、全体的に言えるのですが、「“人がいい”人が多いな」と感じました。主人公は圧力にさらされながら陰謀を追っていくのですが、その圧力がぬるいです。

 それぞれの人に良心や同情があるせいで非常に手ぬるいのです。

 映画の切れ味が鈍いなと感じるのは、こういった点とも関係があるのかなと思いました。



 人によっては、この映画を「大人の雰囲気で、知的」と言うかもしれません。しかし、それは退屈と紙一重です。

 いやまあ、退屈な映画ではないのですが。

 私の印象としては、「あまりにも丁寧に作ったせいで予定調和的な印象が強くなってしまった」という感じでした。



 以下、粗筋です。(中盤ぐらいまで書いています。ネタバレというほどのことはないと思います)

 主人公はイギリスの外交官。彼は講演で出会った女性と結婚する。

 彼女は正義感が強く、社会の不正を正そうと意気込んでいる。

 そして、夫についてナイロビに入る。

 彼女はそこで、医療ボランティアに積極的に関わる。そして、現地の男とともに飛び回る。

 主人公は、彼女の不倫を心配しながらも、彼女の活動を黙認する。

 主人公の妻は妊娠する。しかし流産する。そして、彼女は旅行先で、現地の男とともに襲われて殺害される。

 妻はなぜ殺されたのか?

 主人公はその真相を追いだす。その最初の動機は、妻の不倫を疑ってのものだった。

 だが、調べるに内に、背後に薬品会社の陰謀があることを知り始める。

 彼は命の危険にさらされながら、妻が調べていた事実を知ろうと奔走する……。



 ストーリーについては、先に感想を書いたので、映像について書きます。

 映像は、色彩のコントラストを思いっきり強くしたものです。

 きれいなのですが、結構目にきつかったです。たぶん、大画面で見続けると目が痛くなるんじゃないかと思いました。

 アフリカに行ったことはないのですが、ああいった強烈な色の印象を受けるならば、相当太陽が強いんだろうなと思いました。

 日本にいると、あんな強烈な色を見ることはできませんので。
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