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2007年09月10日 17:36:41
スミス都へ行く
 映画「スミス都へ行く」のDVDを七月下旬に見ました。

 本作は、1939年の作品で、原題は「MR.SMITH GOES TO WASHINGTON」。白黒映画です。

 正確に訳すならば「スミス氏、ワシントンに行く」です。

「都」ではなく、「ワシントン」というのが重要です。

 なぜならば、ワシントンは、ワシントンD.C.だからです。アメリカの政治の中心地です。ニューヨークでもシカゴでもなく、ワシントン。それが大切な映画です。

 この映画は、ボーイ・レンジャーの世話をしていたスミス先生が、タレント議員的にスカウトされて上院議員になり、そこで政治の腐敗を知って、善良な市民として抵抗しようとする話です。

 なので、「都」ではなく「ワシントン」であることが重要になります。



 さて、この映画の監督はフランク・キャプラです。

 フランク・キャプラの作品は「群集」「素晴らしき哉、人生」に続く3作目です。本作もよかったです。

 どの作品にも共通している感想なのですが、人間にとって正しいと思える普遍性のあることを、正面から「正しい」と言っています。

 最近では本当に、こういった「正論を直球勝負で真面目に伝えようとする」映画はないです。

 今見ても、心に響くものがあります。こういった作品は、時代を超えますね。

 内容的には政争の話なので「群集」に似ている部分もあります。

 個人的には、「群集」は荒削りだったけど、その分迫力があり、「スミス都へ行く」は完成度が高くて洗練されている分、迫力には掛ける印象でした。

 同じフランク・キャプラ監督の「オペラハット」も手元に届いているので、見るのが今から楽しみです。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤の直前まで書いています)

 主人公は、子供たちの野外活動を世話するボーイ・レンジャーの先生。

 ある時、地元の上院議員が急死する。その党派の人間たちは、ダムの利権に絡む法案を通すために、議員の人数を欠けさせるわけにはいかなかった。

 彼らは、補欠選挙のために新しい候補を立てようとする。しかし、利権づくめの候補を選ぼうとする態度は、支援者の反発を招いていた。

 そういった中、子供たちから圧倒的な人気を得ている主人公に白羽の矢が立つ。ちょうど、少し前に山火事を食い止めていた彼は人気の絶頂にあった。

 また、彼を選ぶことは、人気もさることながら、党派のクリーンなイメージを強調する上でも有用だった。

 それだけではなく、主人公は、その党派の党首のかつての親友の息子だったことも判明する。

 反対する者は誰もおらず、彼は補欠選挙に通り、上院議員としてワシントンに行くことになる。

 彼は一市民としての良識に富み、建国精神を尊ぶ人間だった。

 その彼の純粋さと青臭さに周囲の人間は少し呆れながらも好意を持つ。それは、党首から与えられた女秘書もそうだった。

 主人公は、かつて父親とともに正義のために戦っていた党首のことを尊敬していた。そして、上院議員として、国民のためになる政治をしようと考えていた。

 彼は、政治家の仕事として、国の未来を担う子供たちを育てることが大切だと考える。そして、都会の子供たちが格安の値段で大自然を体験できるキャンプ場を国で作る法案を出す。

 しかし、そのことが彼の人生を窮地に追い込む。

 彼が出したキャンプの候補地は、利権まみれのダムの建設予定地だった。この法案を潰すために、党首は周囲の人間と協力して、主人公の汚職をでっち上げる。

 そして、党首の最大の後援者であり、黒幕であるメディア王が、主人公に対する苛烈なネガティブ・キャンペーンを展開する。

 尊敬していた人に裏切られ、周囲から罵声を浴びせられ、犯罪者として追い詰められながらも、主人公は自分の考えと正しさを上院議会で訴える。

 その彼の陰には、主人公に共感して心を寄せ始めた女秘書の姿があった。彼女は議会政治に精通しており、主人公が勝てるように、裏から数々の手を打ち、奔走していた。



 非常に完成度の高い映画でした。

 さて、以下、「仕掛けとして面白いな」と思った部分を少し書こうと思います(いくらかネタバレがあります)。

 その一つは、大人対子供の構図です。

 主人公は、ボーイ・レンジャーの先生です。彼は大人ではありますが子供の代表です。そして、子供の純粋な心の代弁者であります。

 汚れた大人対、純粋な子供。

 これは上手い対立構造だなと思いました。

 実際に、この構図は終盤で大いに物語に関わってきます。



 先ほど書いた大人対子供の構図ですが、これは面白い形で表面化します。それはメディア戦争です。

(以下、終盤の展開を少し書くので、ネタバレが嫌な人は避けて下さい)

 主人公の敵の黒幕は、地元の新聞を支配し、多数の企業を所有し、全国のマスコミに圧力を掛けられる力を持った人物です。

 彼は、有権者の心が主人公から離れるように、ネガティブ・キャンペーンを大々的に展開します。

 普通だと、主人公はこのまま言論を封じられて負けてしまいます。

 しかし、彼はボーイ・レンジャーの先生であると同時に、子供新聞の発行者でもありました。

 マスコミ経由で有権者に伝わらない真実を、各家庭の子供向けに配布されている子供新聞を使って届けます。

 これは、マスコミが言論を封鎖できないインターネット時代の言論を彷彿させて面白かったです。

 こういった、ちょっと特異なメディア戦争が、この映画では大人対子供の構図で描かれています。

 これは仕掛けとしてよくできているなと思いました。



 あと、個人的に面白かったのは、上院議会の議長のユーモア溢れるセンスです。

 普通では、若手議員である主人公は、議会でしゃべる機会を徹底的に奪われるだろうと思うのですが、この議長がなかなか味のある人物のおかげでその機会を奪われずに済んでいます。

「まあまあ、若者がしゃべるのを聞いてあげようじゃないか。面白いかもしれないし」

 口に出しては言わないですが、そういった姿勢で彼に発言の機会を与え続けます。

 甘いと言えばそれまでですが、そういった甘い大人がいることで、この映画の一種ファンタジーな展開が成立しています。

 また、硬質で陰湿な話になりそうなのが救われています。

 こういったキャラが中立の立場にいるということは、物語として奥行きを与えてくれるなと思いました。



 もう一つ、面白かったのは、女秘書が姉さん女房的で、後半やたらと頼り甲斐があることです。

「群集」の時もそうでしたが、フランク・キャプラ監督の映画に出て来る女性は、有能で男性をリードして育てるタイプの人が多いような気がします。

 まだ三作しか見ていないので、他は分かりませんが。

 この時代としては、けっこう変わった女性感だったのではないかと思いました。



 さて、最後にこの映画を見て強く思ったことを書こうと思います。

 それは、「自分が尊敬されるべき人間でないのに尊敬されることほど辛いことはない」ということです。

 良心がある人間にとって、それは本当に辛いことです。

 主人公を上院議員にしてくれた党首は、主人公に非常に尊敬されます。

 それは、彼が、かつて主人公の父親とともに正義のために戦ったからであり、上院議員という尊敬されるべき仕事をしているからです。

 しかし、彼の実態は、特定の利益団体のために動くことで政治家生命を保ち、その隙を縫って政治活動をしているというものです。

 そして、中盤以降、主人公と徹底的に対立して、主人公を社会的に抹殺するべき立場になります。

 しかし彼は、主人公に尊敬されることでかつての自分を思い出し、その主人公を裏切る立場になったことを悩みます。

 何より、かつての親友の息子を追い込んで行くことは、彼にとって身を切るように辛いことです。

 映画では、その精神的苦痛がひしひしと伝わってきます。

 また、主人公が、党首に対する尊敬を捨てきれずにいることも、その辛さに輪を掛けます。「あなたほど立派な人がなぜ」そういった態度で、主人公は必死に耐えようとします。

 その様子を見ながら「尊敬されることは、軽蔑されることよりも辛いなあ」と思いました。

 人間、できればやましいことをせずに生きていきたいものです。

 そう思わせてくれるこの映画は、青臭いと言えば青臭いのですが、いい映画だなと思いました。
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