2008年の読書のまとめ7月分です。
星による評価の基準については前述の通りです。
● 2008年07月(7冊/計38冊)
■ 01 四季の花木を墨彩で描く 夏・秋編(小林 菊枝)(★★☆☆☆)
以下でまとめて感想。
■ 01 四季の花木を墨彩で描く 冬・春編(小林 菊枝)(★★☆☆☆)
pixivでのお絵描きが「掛けた手間ほど閲覧されない」というのが分かったので、じゃあ「いかに低コストで見栄えのよい絵を描くか」というのを考えた結果、「墨彩」という方法に行き着き、研究しようと思って買った2冊です。
なぜ墨彩かと言うと、以下のような理由があります。
・CGでは、色数を多く使うと時間が掛かる。
・CGでは、色塗りの精度を求めれば時間が掛かる。
・pixivでは、単色イラストは無視されやすい。
・pixivでは、サムネールの見栄えが閲覧の契機になるので、サムネールサイズで見栄えがよくなる塗りの精度でよい。
・普通の塗りでは上手い人が上手いだけで、そこまで上手くない人は、何らかの差別化が必要。
・水彩系の色塗りでは、滲みやかすれが、そのまま画面の複雑さの度合いを高める。
・墨彩には、少ない色数での、見栄えのよさを上げるためのテクニックが蓄積されている。
上記のような理由で墨彩の研究と実験を行いました。何をするにも、仮説を立て、その仮説を検証する実験をして、その結果を分析しなければなりませんので。
でもまあ結局、pixivは「割に合わなさそう」という理由で、その手法で絵を描きまくるということはありませんでした。その内、この時期に行った勉強や研究を活用していきたいと思います。
■ 03 潮騒(三島 由紀夫)(★★☆☆☆)
それなりに面白かったのですが、三島由紀夫に求めている物は得られなかったなというのが実感です。
ありていに言うと、「金閣寺」のような凄い文章を期待して読んだけど、そんな文章は読めなかったという感じです。話自体は、それなりに面白かったです。
■ 11 李陵・山月記(中島 敦)★★★★★ これはもう鳥肌物の出来です。やはり傑作。もう、こういった文章を書ける人は出ないと思います。この文章を書くには、そういった環境(漢学者の家系)に生まれないと無理ですので。
学生時代に教科書で読んだ時に、「ああいいな」と思っていたのですが、この年になると、この本の凄みがよく分かります。確実に学生時代よりも味わって読めます。
数年前に、ラジオで「山月記」の朗読があり、それを聞いたのが再読しようと思った切っ掛けです。ラジオで放送できるほどに短い話なのですが、その密度の濃さといったら感動で涙が出そうになります。
本書には、「山月記」以外にも何本か短編が収録されているのですが、そのどれもがよかったです。読み終わった後、欲望の赴くままに再読してしまいました。
美酒とともに読みたい一冊です。これぞまさに、文章の美酒といった感じです。本棚に十冊だけ本を残してよいと言われたら、確実に残る一冊です。
■ 27 たったひとつの冴えたやりかた(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)(★★★☆☆)
TRPGの「トラベラー」とか、ル・グウィンの「闇の左手」や「風の十二方位」とかの大きな宇宙世界を思い出しながら読みました。
私の中ではル・グウィンはこういったSFで親しんだ人なので、普通の人みたいに「ゲド戦記」の人ではなかったりします。「闇の左手」や「風の十二方位」は、高校時代にかなりはまりました。
本書では、そういった大きな世界での文明の衝突を、いくつかのエピソードで描いていました。もっと硬質な話かと思っていたのですが、だいぶ緩い話で「宇宙船サジタリウス」辺りの印象に近かったです。
ラスト辺りでは、思わず胸が熱くなり、涙が滲んできました。でもまあ、だいぶご都合主義だとは思いましたが。
あと、あとがきは衝撃を受けました。そんな死に方をしていたとは。衝撃でした。以下、Wikipediaより引用。
□Wikipedia - ジェイムズ・ティプトリー・Jr.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%97%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BBJr.1987年5月19日、老人性痴呆症が悪化した夫を、前々からの取り決め通りにショットガンで射殺し、みずからも頭を撃ちぬき死亡。71歳。
あまりにも壮絶な死に、腰が抜けました。
■ 29 阿部一族・舞姫(森 鴎外)(★★★☆☆)
短編集。序盤は面白くなかったです。たぶん、森鴎外の留学経験が元になった話だと思うのですが、日本語も物語もあまり出来がよくないです。
しかし、後半はぐいぐいと面白くなっていきます。日本語も物語も出来がよくなっていきます。
よく考えれば、この頃はまだ日本語の小説のスタイルが出来ていなかった頃です。つまり、そういった黎明期なので、今から見れば出来がよくなかったわけです。
そして、表題にある「阿部一族」は、ぞくぞくする面白さでした。「死狂い」です。
南條範夫の「駿河城御前試合」が山口貴由のマンガ化で「シグルイ」になったのに対して、「阿部一族」は、小説のまま「シグルイ」の臭いを強烈に放っています。
これは、「シグルイ」が好きな人は、絶対好きだと思います。粗筋を書くと以下の通りです。
肥後藩主細川忠利が死んだ。直属の部下たちは、続々と腹を切って果てる。だが、藩主に切腹を許可されなかった男がいた。男は藩主に嫌われていた。彼は主命を破って切腹する。しかし、殉死者の列には加えられず、彼の一族は家格を著しく落とす。嫡子は父の汚名を雪ごうとするが、新藩主の命により縛り首にされる。数々の屈辱の末、一族の者たちは家に立てこもる。その阿部一族を誅滅すために、藩の手練たちが集められた。まだ戦国の風の残る時期である。彼らは阿部一族を皆殺しにするために、屋敷に殺到する……。
ともかく、冒頭から、一人また一人と切腹するシーンが延々と続きます。それだけで、かなり当てられます。もう、初っ端から死狂っています。
そして、嬉々として死んでいく人々を見て、だんだん感覚がおかしくなってきます。ラストは、屋敷での「これでもか」という死闘。
面白かったです。素晴らしい「シグルイ」でした。
■ 30 三島由紀夫の美学講座(三島 由紀夫)(★★☆☆☆)
三島由紀夫のエッセイなどから、彼の美学観が分かるものを集めた本です。
参考にはなりましたが、だから面白いというものではなかったです。