2009年の読書のまとめ8月分です。
星による評価の基準については前述の通りです。
● 2009年08月(5冊/計33冊)
■ 02 街道をゆく16 叡山の諸道(司馬遼太郎)
(★★★☆☆)
最澄のお話。同時代の人である空海については、司馬遼太郎は「空海の風景」を書いています。こちらは既に読んでいます。
司馬遼太郎の視点では、空海は天才で、それゆえに全てを完成させてしまい、それがために後進で目立つ人物が出なかった。対して最澄は、凡人で、完成にはほど遠いところで没し、それゆえに中興の祖がたくさん出たという感じです。
その最澄の一生を中心にした本が、この「叡山の諸道」になります。平安時代の宗教の様子や空気感、平安時代が崩壊したあとの大宗教の転換などが分り、おもしろかったです。
■ 11 街道をゆく17 島原・天草の諸道(司馬遼太郎)
(
★★★★☆)
こちらも、司馬遼太郎の「街道をゆく」です。
これは、鳥肌物の話です。
島原の乱の背景から、その展開、その後の顛末までを書いた本なのですが、ともかく凄まじいの一言です。
キリスト教など関係なく、極めてあくどい圧政下で、地獄絵図のような極限状態まで追い詰められた末の爆発だったのがよく分ります。
島原の乱の時期の支配者は、先代に入植してきた一族です。その先代領主は、「冷淡で大胆なことをやってのける」ということで、無慈悲に大胆な弾圧をするためにこの地に封じられた戦国末期の人物です。
また彼は、自己肥大した自尊心を満たすために、農民を絞りに絞って、幕府に見栄を張っていたそうです。
それが次の息子の代になり、「絞る」という部分だけがシステム化され、「どれだけ絞れるか」ということが支配者側の価値観になり、農民は餓死寸前になりました。
そして、この地の農民の少なからずの人数が、先代が来る前の領主の配下の武士たちだったそうです。彼らは、武芸に秀でて、武具(鉄砲含む)も所持していたそうです。また、指揮官クラスの人間もけっこういたそうです。
そして、「絞る機械」と化した支配者と、餓死寸前になった農民兼元武士団が激突したのが島原の乱だったということでした。
そして、キリスト教という「踏み絵」で、キリスト教徒でない人たちにも「死の選択」を迫り、無理やり団結していき、先鋭化していった結果、多数の死者が出たというのが真相だったようです。
かなりの人が、「同じ農民に殺されないために」、キリスト教徒として戦ったということでした。
さらに凄まじいのは、乱の終結後です。領主は打ち首。そして、村単位で人が空になったので、税を思いっきり下げて、各地より移民を募ったということでした。おかげで、島原には、この時代の移植者が多いそうです。
島原の乱というのが、未曾有の「乱」だったのが、よく分る本でした。
■ 22 失楽園 上(著:ミルトン、訳:平井正穂)
(★★★☆☆)
欧米の「悪魔」の価値観を知るために読んだ本。きっかけは、町山智浩さんのポッドキャストです。
序盤の演説は「ルシファーかっこいい!」という感じでしたが、中盤以降はどんどんしょんぼりという感じになりました。
体が小さくなると、心も矮小化するのかと思いました。
■ 28 Google Androidプログラミング入門(株式会社豆蔵)
(★★☆☆☆)
情報収集のために速読で読みました。
情報系の本なので、面白いとか面白くないとかではないので、標準の★の数です。
■ 31 奇術師(クリストファー・プリースト)
(
★★★★☆)
面白かったです。しかしまあ、文章自体に様々な騙しとくすぐりが入っているなと思いました。
映画と合わせて読みたい一冊でした。