映画「SFソードキル」のDVDを八月下旬に見ました。
1984年の映画で、原題は「Ghost Warrior」。監督はJ・ラリー・キャロル、脚本はティム・カーネン、主演は藤岡弘です。
まさに、「藤岡弘」映画です。サムライ!サムライ!サムライ!という感じで、藤岡弘が一人で熱演して映画を盛り上げていました。
● 藤岡弘の熱意
この映画の主演は藤岡弘です。
映画は、「氷漬けになった古代のサムライが現代に蘇る in アメリカ」といった内容のものです。
普通に作れば、単に痛いギャグ映画にしかならないような内容ですが、これが実はきちんと感動作になっています。
これは、藤岡弘の貢献が非常に大きいです。当初、この映画の脚本を見た藤岡弘は、あまりにも滅茶苦茶なサムライ像に驚き、色々とリライトを要求したそうです。
その苦労が実って、本作はアメリカB級映画なのに、まともなサムライが描かれています。
そして、もう一つこの映画を特徴付けているのが、藤岡弘の熱演です。もう、現代に蘇った侍を体現しています。というか、そもそもこの人が、侍みたいな人なのですが。
というわけで、藤岡弘の圧倒的な熱演のおかげで、この映画はまともに楽しめる侍映画になっています。
でもまあ、ぶっちゃけて言うと、話自体は「冷凍人間蘇り物」なんですよね。そこはまあ、B級映画ですし。
● 日本人
この映画ですが、藤岡弘が出ていないシーンの出来は、どこも酷いです。特に冒頭の雪山の日本人旅行者のシーンは惨憺たるものです。
まあ、この手の映画って、主役クラス以外は、日本人じゃない人が日本人を演じていたり、また、俳優として使い物にならないレベルの人が演技をしたりしているものですし。
それにしても、酷いなあと思いました。でも、これは仕方がないですね。
● サムライの視点
この映画、実は侍は、最初から最後まで「侍のまま」振舞います。
現代社会を見て適応したりは一切しません。あくまで、侍の視点のまま振る舞い、そしてラストまで突き進んでいきます。
この手の話は、亜種のタイムスリップ物です。そして、タイムスリップ物では、時間旅行者が「その時代に適応する」か、「ギャップを持ったままでいる」かの二択になります。この二つの中では、前者が圧倒的に多い気がします。
そういった意味では、かなり特殊な映画なのではないかと思いました。
「ギャップを持ったままでいる」という選択で、近い作品を上げるとするなら、「北京原人 Who are you?」(1997)の北京原人でしょうか。
ただ、「SFソードキル」では、侍は知能が高い存在として描かれているのが違います。
ここらへんは、作品ごとにマトリクスを作って分類してみると面白いかもしれないと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレを気にする映画ではないので、中盤の終わりぐらいまでそのまま書きます)。
主人公は侍。彼は恋人を奪われ、救出に行く。しかし、恋人を殺され、自らは氷に覆われた湖に水没する。
現代。雪山で、氷漬けになった侍が発見される。侍はアメリカの研究所に運び込まれて蘇生される。
記者として取材に来ていた女性は、侍について勉強して、主人公と研究者の橋渡し役となる。彼女は、徐々に侍に惹かれ始める。
ある日、研究所の警備員が侍から刀を盗もうとする。その男を切って捨てた主人公は、研究所の外に出る。
彼は、不良に絡まれている黒人老人を助ける。老人は退役軍人だった。侍と軍人、時代は違えどどこか通じるものがあったのか、二人は行動をともにする。しかし、現代に蘇った侍に安住の地はなかった。
警察は殺人犯として主人公を追う。また、研究所の職員は、証拠隠滅のために主人公を消そうとする。さらに、不良たちも主人公を襲おうとしていた。
そういった中、記者の女性は主人公を助けようと奮闘する。二人は再会して、逃避行を始める……。