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2013年08月30日 13:29:48
● 1〜7話の感想
話題になっており、日テレ オンデマンドで1〜7話が無料公開になっていたので7話目まで見ました。
個人的な感想としては、これは失敗作だと思いました。
共感ポイントがなく、主人公に悩みや迷いがなく、登場人物に奥行きがありません。敵も敵なりの正義がなく、思い入れを持てません。少なくとも、7話目まで見た限りでは。
映像はきれいで、最近の流行りは取り入れているけど、人間ドラマがまったくできていないのがきつかったです。
これは邪推ですが、戦闘シーンになると間が持ち、それ以外しゃべりっぱなしということは、戦闘シーンを引いた分、人間ドラマを足すのに失敗したのではないかなと思いました。
あと、「主人公」と「敵」のしゃべりが苦痛というのは厳しいです。主人公と敵が出てくるとうんざりします。この2人が出てこないと、ほっとする。
「ガッチャマン クラウズ」は、7話目まで見ましたが、かなりしんどい苦行でした。
● Twitterでのヒアリング
そういったことをTwitterで呟き、この作品がよいと言っている人は、どういった所をよいと思っているのかヒアリングしました。
その結果、主に以下の2点がよいということのようでした。
1. 主人公が魅力的。
2. 最近のネットなどの世界観を反映させた作品が待望されていた。この作品は、それを高度に実現している。
2に関しては、そこは評価しています。アメーバピグ+Twitter+LINE風のネットサービスを使い、今の世界で実現可能なレベルでの話を上手くやっているなと思いました。
「クラウズ」という名前の部分も、クラウド ソーシング的にヒーローをやるという試みで、そこは上手い設定だと感じました。
しかし、1に関しては、ちょっと違うなというのが正直な感想です。あれを魅力的と思うかどうかで、この作品の価値が大きく変わるだろうと思いました。
以下、自分なりの見解を述べていきます。
● 物語と観客の接点
「ガッチャマン クラウズ」で一番問題だと思ったのは、物語と観客の接点がないことです。
一般的な物語では、観客は、主人公(もしくは準主人公)と自分を重ねることで、物語世界に入ります。
そのために主人公は完璧な人間であってはなりません。「現在抱えている問題」がなければなりません。
ここ数年で見た以下の3つのアニメを元にして、話を進めていきます。
・TIGER & BUNNY(以下、タイバニ)
・魔法少女まどかマギカ(以下、まどかマギカ)
・輪るピングドラム(以下、ピングドラム)
「タイバニ」では主人公は、「リストラ寸前のサラリーマンで、有能な新人の当て馬にされる」という、ターゲット観客(30代ぐらいのサラリーマン)に沿った「問題」を抱えていました。
その問題に対して、努力と経験で挑むという問題解決の構造がありました。
「まどかマギカ」では、「自分は何もできない無価値な人間なのではないか」という不安を、主人公は抱えていました。
その問題に対して、存在価値を肯定してくれる魅力的な人間(マミさん)と、それに対抗する人間(ホムラちゃん)という、主人公を揺さぶる構造が用意されていました。
「ピングドラム」では、「病気の妹」という問題と、「その妹が生き長らえられるかもしれない」という問題解決が用意されていました。
これらはすべて、「主人公の問題」であり、そこが「感情移入のポイント」になります。
主人公は、だからこそ、物語世界の中で疾走するわけです。観客は、そのウェーブに共感しながら、物語を追うわけです。
しかし「ガッチャマン クラウズ」の主人公は「完成している」がために、感情移入のポイントがありません。彼女は7話目までで、「誰にでも分かる問題」を抱えていません。
そのため、鑑賞対象にはなり得ても、物語の主人公にはならないです。
● 現実と非現実の境界
また物語は、現実と非現実の境界を往復することで成立します。しかし「ガッチャマン クラウズ」では「現実」が描かれません。
「現実」とは「リアリティ」であり、もっとべたな話をすると「生活臭」です。
主人公がいきなりマンションで準主人公の男の子と同居し始めた時点で、「これは物語として破綻している」と感じました。
「まどかマギカ」では、非現実の戦闘と共に、現実の家庭と家族が執拗に描かれます。
「タイバニ」では、主人公の娘が描かれ、準主人公のバニーの過去が描かれます。また、ヒーローたちのオフの生活の話もあります。
「ピングドラム」では、トリッキーな演出と話とは裏腹に、兄弟の生活が丁寧に描写されます。
そういった、現実と非現実の循環の部分について、「ガッチャマン クラウズ」は現実部分が破綻しています。
なので、普通の文脈で物語に入ることはできず、ただの鑑賞対象になっています。
● キャラ鑑賞アニメ
「ガッチャマン クラウズ」は、鑑賞対象でしかないコンテンツなので、「キャラ」を気に入るかどうかが重要になります。
しかし、「ガッチャマン クラウズ」では、その「主人公キャラ」が、「くどく、うざい」ために、評価が著しく悪くなります。
彼女がしゃべる正義も、しょせん一面でしかありません。「大人は、そういった面もあることが分かった上でどうするかを考える」という点で、子供の振りかざす正義でしかありません。
その子供の正義をマシンガンのようにしゃべりたてるので辟易します。
また、敵がネットスラングをしゃべりまくるのですが、その根拠が一切示されていません。ただの痛い人です。
言ってみれば、泡沫候補のマック赤坂がラスボスのアニメに見えてしまいます。あるいは2chに張り付いているネット廃人とか。
この方向性の「キャラ」に頼るコンテンツの作りは、そのキャラが刺さる人には受けるのでしょうが、万人に受けるコンテンツではありません。
私は、このアニメの「主人公」と「敵」キャラについて、「くどくて、うざい」と感じました。たぶん「ウリ」の部分が刺さらなかったのでしょう。
前記のように、構造的に万人に受け入れられる作りにはなっていないので、キャラが駄目だと、そこで終わりです。
せっかくの作品なのに、もったいないなあと思いました。
ネット関係の設定は面白く、絵はきれいなのに、物語の構造が欠損しているので、非常に狭い範囲にしか届かないコンテンツになっていると思いました。
● じゃあ、どうするか
普通に万人受けするように作るのなら、現在の主人公ではなく、その「先輩」を主人公にするべきだと思います。彼は、少し情報の出し方を変えて、それを強調すれば、主人公になる要素を持っています。
以下、彼を主人公にして、序盤に提示すべき情報です。
・幼少時代、年上のガッチャマンに助けられて、彼に憧れている。
・自分もガッチャマンになり、そのことを誇りに思っており、仕事を盲信している。
・自分の考えを揺るがす事件が内外で起きる。
・外的要因としては、ガッチャマンのヒーローとしての仕事が、クラウズに横取りされて、自分の手を経ず解決してしまう。そして存在意義を失う。
・内的要因としては、新人が入ってきて、ガッチャマンのヒーローとしての仕事を否定してしまう。
・さらに、これまで倒していた敵が、実は悪事をしていなかったことが発覚して、ガッチャマンは解散になる。
・ガッチャマンを盲信している主人公は、ガッチャマン再興のために調査を始める。
・ガッチャマンの仕事を否定した新人も、ガッチャマンという存在に疑念を持っているので、無理やり調査に加わる。
・新人は、実はクラウズ側と繋がっている。
・ガッチャマンは、実は正義ではなかったことが発覚する。自分が助けられたことは、実は正義のためではなかったことを主人公は知る。
・正義ではないが、力を得ている主人公は、その力をどう使うかという立場に立たされる……。
取り敢えず、ざっくりと書きましたが、主人公には悩みが欲しいなというのが、個人的な感想でした。
あと、どうでもよいですが、日テレ オンデマンドで「ガッチャマン クラウズ」を見ると、宣伝のタイミングのたびに、「剛力彩芽ガッチャマン」の宣伝が4回ずつぐらい流れるのは、どうにかして欲しいかったです。
まあ、無料で見られるので、宣伝なのは分かるのですが、これだけ多いと逆効果だよなと思いました。