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[映画] 「風立ちぬ」感想 …「少年の夢」と「理想郷」

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2013/08/30(金) 13:35:13
 映画「風立ちぬ」を昨日見に行ってきました。

 2013年の映画で、監督は宮崎駿。主人公の声は、庵野秀明が演じています。

 前評判や前情報は大量に摂取していました。ゼロ戦を作った堀越二郎の話と、堀辰雄の「風立ちぬ」をハイブリッドした、宮崎駿の妄想映画です。

 これが、何というか、映画館で泣きました。一言で言うなら、物作り男子の「理想の夢」であり「桃源郷」を描いた映画です。

 それが、宮崎アニメ独特の柔らかさと丸さで、ゆったりとした抒情とともに描かれます。初々しさと円熟が入り混じった独特の雰囲気で、私は非常に満足しました。

 でも、万人受けはしないだろうなとも思いました。以下、感想を書いていきます。



● 「少年の夢」と「理想郷」

 この物語は端的に言うと、少年の頃の夢のままに人生を邁進していき、その夢の職業に就き、その仕事をまっとうできる才能を持つ人間の話です。

 彼は、全てに祝福されて、その人生を歩んでいきます。

 親友でもあり、同僚でもあり、よき競争相手でもある友に恵まれます。

 自分を理解してくれて、あらゆる支援を惜しまない上司に出会い、愛されます。

 専門分野の知識を得るために海外に視察に行き、会社の計らいで世界を歴訪して戻ってきます。

 何度失敗しても、飛行機の設計にトライさせてもらう、チャンスをもらいます。

 そして、自分を全肯定してくれて、「仕事をしているあなたが好き」と言い、全てを捧げてくれる女性に出会います。

 世界が、全て自分の夢のために動いてくれる男の物語です。これは「夢を持った少年」にとって「理想郷」とも言うべき世界です。

 宮崎駿は、この領域に到達した人間です。この映画は、彼自身の物語です。そして、こういった世界は、数多くの犠牲の上にしか成り立ちません。その話を次に書きます。



● ずるい男

 映画中、主人公は、カプローニさんという、憧れの人であり、精神的メンターである人と、何度も夢で出会います。

 カプローニさんは主人公にこう尋ねます。「ピラミッドのある世界と、ない世界。君はどちらの方が好きかい?」この問いに主人公はこう答えます。「僕は美しい世界が好きです」

 映画の途中で、主人公は貧しい子供達に、菓子パンを与えようとして拒否されます。そのことを親友に話すと、「君、それは偽善だよ。俺達が作っている飛行機の部品で、いったい何人が食えると思っているんだい」と言われます。

 親友は、「自分の夢を追うことが、犠牲の上に成り立っている」ことを自覚し、肯定しています。

 主人公は、そこで思考停止をして、それ以上考えようとしません。

 また、自分が作った飛行機で多くの人間が死ぬという領域に到達した後、それについて正しかったのかと吐露するシーンがあります。しかし、どこか他人事で空疎な空気が漂い続けます。

 主人公は、自分の悪の側面に無自覚で鈍感で、無意識の内に目をつむっています。それは、夢が肥大して痛覚が麻痺した人間の姿です。無意識の底に、世界は全て自分の夢のためにあるべきだという思いが眠っている男の無垢な姿です。

 映画には、主人公のアンチとなる存在が用意されています。こういった主人公の姿を暴き、否定する人間がいます。それは主人公の妹です。

 医者の卵の妹は、何度も主人公に「薄情だ」と文句を言います。そして、主人公の夢の犠牲になる妻を「かわいそう」と言います。

 たぶん、現実の世界にこの主人公がいた場合、その周囲の状況を客観的に見たら、この妹の視点が、一番まともなのでしょう。

 そして、この妹のような存在が映画中にいるからこそ、主人公とその周囲の、純粋な狂気の世界が、美しくきらめいて見えるのです。

 狂気と書きましたが、ある意味そうだと思います。「才能と夢は美しい」そういった理由で、あらゆる人が、そのために犠牲になる世界は、何かが狂っています。しかしそれは、とても純粋で輝いている。

 その男が進んだ後に、屍が積み上げられようとも、美しい果実が待っている。その夢の終着点に到達することは、物を作る人間としては理想だと思います。

 そこまで来た主人公は、自分のやって来たことに疑問の声を漏らします。でも、その台詞には、「間違っているとは絶対思っていない」という確信が滲んでいます。

 なぜならば、主人公の夢の登場人物であるカプローニさんが、主人公の夢の中で、彼の行為を全肯定しているからです。その世界を正しいと宣言しているからです。

 恐ろしいまでに清々しく、才能と夢による世界の美しさを描いた映画。そういった世界に生きる人間の青春映画。

 それが、私が見た「風立ちぬ」の感想でした。



● 自分と重ね合わせてしまう

 さて、この映画を見て、共感できるかどうかは、ひとえに主人公と自分を重ね合わせられるかどうかに掛かっていると思います。

 たぶん、物を作る仕事をしている男性は、かなり強く共感できるのではないでしょうか。

 特に、子供の頃から妄想好きで、そういった方面の仕事に就いている人は、強く同意できると思います。

 幼少時に妄想にふけり、外出先で熱中して帰宅を忘れ、親によく怒られていた少年時代を過ごしてきた人間には、生き写しのような主人公です。

 この映画は、そういった人間にとって、恐ろしいほど理想の世界を描いた桃源郷です。こうであったらよいなと思う人生が描かれています。

 女性がシンデレラの話に憧れるように、物作り妄想男子が憧れる世界が、この映画の中にはあります。

 そこに共感できるかどうかが、この映画の評価の分かれ目だと思います。そういった意味で、この映画は万人向けではなく、かなり限られた範囲の人向けの映画だと感じました。

 それと、薄情とか冷酷漢とか言われるのは、自分もよく経験してきたので、色々と共感する部分がありました。

 別に薄情とか言うわけでなく、単にそこに対する興味が、他よりも薄いだけなのだと。何となく「分かる」と思いました。



● 円熟の表現

「円熟の表現」という言葉が、ぴったりだと思います。

 尖っていなくて、刺激が強過ぎず、穏やかで温かみのある表現で映画は進みます。

「ハウルの動く城」の夢のシーンや、「崖の上のポニョ」の幻想的なシーンは、けっこうどぎつく迫ってきたのですが、そういった技術は使いつつも、非常に優しげに世界が描かれていきます。

 特に驚いたことは、全てが柔らかく丸みを帯びていて、呼吸していることです。

 登場人物が感情とともに胸を膨らませたり、内側から外に広がったりという表現は、宮崎アニメではよく見られる表現で、彼の作品の特徴の一つにもなっています。

 それだけでなく、飛行機もたわみ、歪み、膨らみ、呼吸をしています。世界の至るところで、ものが生きているように動きます。

 映画の冒頭で驚いたのは、関東大震災のシーンです。布団の端を持って、パンッと波打たせるように、町全体が地震の波で、次々とたわんで跳ねていきます。木造の家が歪みながら波を通していき、瓦が小石のように弾んでいく光景です。

 最初、これが起きた時に、主人公の妄想がまた始まったのかと思いました。でも、それが現実の世界の災禍だと知り、驚きました。

 この瞬間、映画は現実と夢の境界が曖昧になります。

 自分がスクリーンを通して得た体験から、「この主人公は現実と夢の境界に生きている人物なのだ」と実感させられます。この主人公にとっては、現実も夢も同じように見えるのだと。

 そういった演出も含めて、円熟の表現だなと思いました。



● 「初々しい恋」「男のエゴ」

 しかしまあ、初々しい恋を描いています。出会い、交際、キスシーン、結婚、初夜。その全てを、「恋に輝いた女性」の姿を描くことで、とても瑞々しく見せてくれます。そして、不器用な男性をそこに据えることで、とても初々しく描いてくれます。

 そしてヒロインが、はっとするほど美しく見えるシーンが多いです。たぶん、宮崎アニメの中で、これほどの美人はいなかったのではないかと思えます。

 それは、彼女が恋をしているから。もっと言うと、彼女の中には、恋以外何もありません。恋の権化。内面から溢れる恋だけで存在している登場人物。だから、眩しいほどに輝いてみえるのです。

 でも、これは全て、男性側から見た理想の女性です。

 関東大震災で助けた少女が、美しい女性に成長して自分の前に現れる。彼女は、自分のことを「白馬の王子様」だと思ってくれていて、自分を無条件に全肯定してくれる。

 そして、結核を患っていて、自分の美しい姿を見せられる間だけ、自分の手元にいてくれる。

 これは激しい「男のエゴ」です。なぜならば、本物の堀越二郎には、こういったエピソードはないから。こういった女性を描きたいがために、宮崎駿は堀辰夫の「風立ちぬ」と物語を合成したから。

 史実ではなく理想。そこに、激しい男のエゴがあります。一言で言うと下衆の極みです。それが男性の本質なのでしょう。

 私が、この「男のエゴ」を一番感じたシーンは、軽井沢で主人公が結婚を申し込むシーンです。

 主人公は、ヒロインの父親に対して、彼女をくださいといった話をします。おそらく、経済的には、ヒロインの家の方が上だと思われます。文化的素養も上でしょう。そして、ヒロインの父親は、主人公に好意を持っているでしょうが、結婚まで考えているかどうか疑問です。

 そこで父親は躊躇の表情を見せます。しかしこの躊躇は、「主人公が娘の夫に相応しいか」という迷いではなく、「娘は結核を患っているので、あなたは妻にしてもよいのか?」といった迷いです。

 普通はあるであろう「恋の障害」が、目の前に父親がいるのにも関わらず排除されている。

「あなたの娘をください」という依頼が、数秒後には「あなたの娘を私が引き取ってあげます」という、立場の逆転に書き換えられてしまっている。

 これほどずるい話はないよなあと思いました。私はこのシーンに、男のエゴイズムを強く感じました。



● 庵野秀明

 散々色々と言われていた庵野秀明の主人公の声ですが、結論から言うと、まったく気になりませんでした。

 というよりも、この声を聴き「ああ、こういう人なんだ」と主人公のことを思いました。そういう意味で、宮崎駿の人選は正しかったと思います。

 あと、庵野秀明の声、思ったよりも若々しいですね。本人の気持ちが若いのかなあと思いました。



● あらすじ

 以下、あらすじです。ラストの方まで書いています。

 飛行機に憧れる少年は、視力が悪かったために飛行機乗りを諦める。その代わりに飛行機の設計士を目指す。彼はカプローニさんという、飛行機の設計士に憧れていた。妄想好きの主人公は、すぐに妄想の世界に入り、そこで何度もカプローニさんと巡り合っていた。

 大学に進んだ主人公は、電車に乗っている途中で関東大震災に遭う。彼はそこで、少女とその女中を助ける。

 卒業した主人公はミツビシに入り、飛行機の設計の仕事を始める。主人公の才能は認められ、大学の同期で親友の同僚とともに、仕事に邁進する。しかし、飛行機後進国の日本では、なかなか国産飛行機は上手くいかなかった。

 ドイツのユンカース社と契約し、主人公達はドイツに視察に行く。そこで主人公と親友は最新の技術を吸収する。

 日本に戻ってきた主人公は、国産飛行機の開発を行う。しかし飛行は失敗して、失意を癒すために軽井沢に行く。そこで主人公は、関東大震災で助けた少女と偶然再会する。彼女は美しい女性に成長していた。二人は恋に落ち、婚約者となる。しかし、彼女は結核を患っていた。

 主人公は仕事場に戻り、新しい飛行機の設計に邁進する。そこに、婚約者が血を吐いたと電報が入る。主人公は慌てて彼女の実家に行く。婚約者は、主人公と生活するために、病気を治すことを決意し、山の療養所に行く。

 結核の治療のために山に行っていた婚約者が、主人公の許にやって来る。彼女は主人公との生活を求める。主人公は、上司の家の離れを借り、結婚して二人で生活を始める。しかし、妻は寝たきりだ。主人公も、日中は仕事で、夜も家で仕事をする。

 妻は、その主人公の横で、嬉しそうに彼を見て時を過ごす。病は重くなり、妻は再び山に戻る。主人公は飛行機を完成させる。
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