映画「ドーン・オブ・ザ・デッド」のDVDを、2012年2月に見ました。
2004年の映画で、監督はザック・スナイダー。脚本はジェームズ・ガン。主演はサラ・ポーリーです。
ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」のリメイクになります。全体的に密度が高く、アクションシーンも豊富で、出来もよかったのですが、「ゾンビ」と違って、あまり印象に残りませんでした。
そこはオリジナルの力が強く、リメイクがそれを越えるのは難しいということなのでしょうか。
● ショッピングモール
ロメロの「リビング・デッド」プロジェクト第二弾の「ゾンビ」(1978年)は、ショッピングモールに立てこもる映画です。
この映画では、主役は「ショッピングモール」とでも言うような感じで、主人公達登場人物以上に、ショッピングモールという「キャラ」が立っていました。
それもそのはずで、ロメロのゾンビ映画では、世相を反映したSF的風刺のようなテーマが、各映画に盛り込まれています。
この映画では、当時アメリカの生活を変えていたショッピングモールという存在が、大きな興味の対象になっているそうです。
その「ショッピングモール」への視点が、元々の「ゾンビ」という映画には存在します。
本作は、その「ゾンビ」をリメイクした作品ですが、その「視点」が完全に欠落しています。
そのため、「ショッピングモール」という「キャラ」は、単に「舞台」に成り下がっています。
「ゾンビ」で描かれた「人間とショッピングモールの相互関係」という“人間”関係は、本作では無視されています。
それが一番分かりやすいのが、「ショッピングモール」に、敵としての「警備員」が配役されていることです。
「人間とショッピングモールの相互関係」が描けなかったので、「主人公達と警備員達の相互関係」に置き換えたわけです。
これでは「ショッピングモール」に逃げ込む意味はどこにもありません。
もしこれを、オリジナルの趣旨に則ってリメイクするなら、「現代でショッピングモールに相当する存在」を考察して、それを採用する必要があります。
実は、そういったことはロメロ自身が既に行っており、「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」(2008)で、「ネットワーク社会における死の恐怖と、その情報共有を行おうとする現代人達」という考察が映画に反映されています。
本作には、そういった部分が欠けているので、単なるアクション映画になっており、そのせいで印象を残さないのだろうなと思いました。
● ゾンビと赤ん坊
この映画では、妊婦がゾンビ化して、ゾンビ赤ちゃんが生まれます。
「母子感染するんだ」と、ゾンビの伝染経路が気になりました。
あと、この描写は、たぶん「アイアムアヒーロー」(花沢健吾)に反映されています。そういうシーンがありましたので。
● アクション映画
アクション映画としては面白かったです。
特に「ゾンビのリメイク」ということを気にしなければ、普通に楽しめる映画です。
隙間無く群がり、ダッシュしてくるゾンビは、かなり見応えがありました。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
看護婦の主人公の夫が、近所の少女に襲われる。少女はゾンビになっていた。主人公は感染者から逃げる。しかし町は、ゾンビだらけになっていた。
逃走途中に知り合った人々と、主人公はショッピングモールに逃げ込む。そこには警備員達がおり、彼らと対立しながら、その場所で暮らすことになる。
そこに、逃亡者達がやって来る。その中いた人間がクルーザーを持っているという。主人公達は脱出計画を立てて港に向かう。
大きな犠牲を出しながらクルーザーに乗り、港を離れる。だが、着いた先の小島の人々も、既にゾンビに感染していた。